やさしい個人旅行講座



〜 2015年 2月 VS 撤退!



:: 2014年9月ヴァージンアトランティック航空日本路線撤退発表から ::


リチャード・ブランソン
ヴァージングループ創設者 リチャード・ブランソン
1969年にヴァージンレコード社を創設
200以上のグループ企業を有する
2000年にナイトの称号を授かる
(VSサイトより)



2014年9月3日いきなり発表された
ヴァージンアトランティック航空の日本ーロンドン線の撤退は
旅行関係者全てにおいて震撼とさせるニュースになりました

もちろん、お客様とて同じお気持ちだったと思います


何故、ほぼ満席を誇るヴァージンアトランティック航空(以下VS)が
日本路線を撤退しなければならないのか!??


ヴァージン機体 747

VS747ジャンボ機



ナショナルフラッグを掲げる最大のライバル
英国航空(ブリチィッシュ・エアウェズ/BA)を脅かすほどに
人気のあるフライト路線でもあります

機内のサービスの充実ぶりは
さすがにレコード会社!
他社にはない音楽、映画、ゲーム機などは
ロンドンに到着してもまだまだ居たい!と思わせる楽しさは
群を抜いていた!と思います


機内の様子
機内の様子

座席前のスクリーンは様々なエンターテイメントが用意されています


そして、何よりも機内食の充実ぶりは定評があります

特に人気なのは和食の「松花堂弁当」


往路の松花堂弁当
お蕎麦、煮物、ごはんの縁も嬉しいです

上は日本からロンドンへの向かう時の和食
下はロンドンから成田へ向かう時の和食


帰路の松花堂弁当
紙に包まれたおこわ
塗りのお椀にお吸い物 デザートは柔かい御餅


この和食をいただきたいために
なるたけ前の座席の確保に努めたものです
(数が限られているので、前ほ座席から配るので)

そして、定番の中継ぎアイスクリーム

アイスクリーム  アイスクリーム
配られたアイスクリームはチョコレートがけのヴァニラでした


飲み物も日本からはキリンの一番搾りなど日本のビールを積んでいましたし、
帰路便はさすがに日本物はなく
イギリスで最も定番(実はベルギー製)のステラ・アルトワでした


キリン 一番搾り
成田ーロンドン路線の最初のサービス



また、機内で配られるアメニティグッズも愉しみの一つでした

エコノミークラスグッズ   

上はエコノミークラスでいただいた機内グッズ
ビニール製の左のポーチに入っていたのは
ティッシュペーパー、アイマスク、ボールペン、
歯ブラシセット、靴下

下はプレミアエコノミークラスでいただいた機内グッズ
内容はエコノミークラスと一緒です


プレミアエコノミーグッズ   


そんな機内充実度では他社に比べたら
非常に人気度も高い路線だっただけに・・・
約5か月後には最後のフライトになってしまうのは
余りにも寂しい・・




何故急に撤退を余儀なくされてしまったのか・・・

改めてこの鬼才な創設者
リチャード・ブランソン氏の立ち上げたヴァージンアトランティック航空を
探ってみたくなりました










:: ヴァージンアトランティック航空とは何ぞや? ::



VS300
VS機 wikipediaより


親会社はご存じヴァージン・グループ

航空会社の設立は1984年
初の運航はその年の6月22日に
ロンドン・ガトウィック からニューヨークの ニューアークへの運航になりました

その設立から4年後に日本支社が設立され、
1989年5月に日本初となる
成田空港ーロンドン・ガトウィック空港を結ぶ路線がスタートします

その時代我が国はバブルと言われるもっとも経済の良い時期でした

振り返ってみると個人旅行のバイブル、とも言われる
“地球の歩き方”を抱えて
若者たちがリュック一つで日本を飛び出し
まだまだ知名度低い格安航空券を求め始めた頃

地球の歩き方イギリス
地球の歩き方 公式サイトより

そんな時代の流れを押し進めるかのように
1991年1月にはヒースロー空港の使用許可を受け、
5月に東京(成田)線の使用空港をヒースロー空港へ移行して
全便直行便化を実現しました




1980年代は俗にいうバックパッカー全盛期

ロンドン直行便、と言えば
日本航空、英国航空は高額ブランドで超高嶺の花

突如現れたヴァージン・VSはまだ手の届く存在でした

そして瞬く間に我が国では
人気の航空会社へと上り詰めていった25年間

人気の機内食(朝食)
ロンドンー成田線の機内食(朝食/イングリッシュ・ブレックファースト)

本当にVSが来年2015年2月2日以降
日本から消えてしまうのでしょうか・・・?









元々航空会社を作ろうとしたブランソン氏は
1982年に太平洋横断路線の格安航空会社として知られていた
レイカー航空ピープル・エキスプレス航空の成功に目をつけ
この会社を設立した、とされています


レイカー航空
ガトウィック空港のレイカー機
wikipediaより



レイカー航空はなんと1960年代後半には
確安航空券を販売していた、という航空会社でした




しかし、残念ながら当時の大手航空会社数社の迫害、
第二次オイルショックなどなど・・で
1982年2月には破綻していました


その後IATA(International Air Transport Association)からも
格安航空券の価格競争に歯止めがかけられましたが
1983年5月には再びあとを追うようにして
米国内にてピープル・エキスプレス航空は設立され
再び時代は徐々に格安航空券競争となっていきます


ピープル・エキスプレス機
ガトウィック空港のピープルエキスプレス機
wikipediaより



そんな2社からインスピレーションを得て設立された
VSはその後持前の機内サービス充実や
先の2社が破綻した原因を踏まえ
(それでもやはり同国同業大手航空会社からの軋轢については
1冊の本になった事実はあります)
経営してきたのはさすが!としか言いようがありません


設立当初はボーイング747-200の機体を使用していましたが、
徐々にエアバスA340-300から600へと移っていきます



VS A340-600型

常に最新型の機材を使用しているVSは
更にその時代時代の最先端を行く
正しく飛ぶ鳥落とす勢いでもありました


しかし、今にして思えば
1999年に株の49%をシンガポール航空に譲渡、
その49%を全てデルタ航空に売却されたのが
一昨年前の2012年のこと・・


 → 
シンガポール航空からデルタ航空へ




この一連の流れから
今年2014年9月3日のVSの大いなる野望へと
強いては今回日本路線撤退の道へと続いていたのです











:: プレスリリースから ::



VS公式サイトより


2014年9月3日に発表された
日本支社長のニック・テイラー氏からの公式発表で
下記のタイトルが付けられていました


『ヴァージンアトランティック航空(以下VS) 路線ネットワークの強化計画と
顧客満足度向上のための投資計画』





以下VSのサイトから抜粋しています





2018年までに過去最高水準の利益を
持続的に達成するための計画を発表します・・中略
その計画とは、
“路線ネットワークの強化計画”と題し
デルタ航空(以下DL)との共同事業の恩恵を最大化することを目指す中で、
大西洋横断路線への追加投資機会を見出し・・略・・
大西洋横断路線に新たに毎日運航5便が追加

その大西洋横断路線で新たに運行されるのは
デトロイト、ニューヨーク、ロサンゼルス、アトランタ、サンフランシスコ
また冬季限定でマイアミへの路線



    

そして、マンチェスターーアトランタ路線を毎日就航させ、
DLが今までVSが飛ばしていた
ロンドン・ヒースローーニューアーク空港/ニューヨーク線を引き継ぐ方になり、
更にDLは2015年夏には
マンチェスターージョン・F・ケネディ空港/ニューヨーク路線を
毎日新たに飛ばすこととなりました

(上記新たな路線は全てDLとVSの共同事業の一環として運航予定)

DLのアトランタ本社
デルタ航空のアトランタ本社


上記の大西洋横断路線強化により、
今回撤退せざるを得なくなった路線の一つが
我が
日本ーロンドン線です

他にはインドのムンバイ、カナダのバンクーバー、南アフリカのケープタウンと
4つ路線のそれぞれが時期は異なりますが
撤退となります

そのうち成田、ムンバイは元々毎日路線のあったもので、
バンクーバー、ケープタウンは季節的な路線でした

ですから、事実上の撤退とされるのは
成田、ムンバイの2路線となります





私達からしてみれば、成田ーロンドンですが、
彼らにしてみると路線方向は逆

2015年最終運航は1月31日
ロンドンー成田
2月1日成田ーロンドンが最後の就航となります





折しも日本は毎年恒例とも言える
学生さん達のツアーが目白押しになる2月

イギリスはロンドンへ行くには
毎年VSさんの席数獲得率はうなぎのぼりになるはず・・

やはりどう考えても撤退するに赤字路線には思えない・・







:: 何故VSはそれでも撤退するのか・・?::






一つには空港問題が、ともささやかれています

現在東京の国際空港は成田国際空港から
羽田国際空港へ移行しつつあります

VSは現在全日空との共同運航(コードシェア)をしていますが、
その全日空(以下NH)便は羽田路線へと移りました

しかし、VSは変わらず成田路線での展開です


成田国際空港
成田国際空港 wikipediaより


また、ライバルでもある英国航空(以下BA)も同じく現在成田空港発着便が
毎日1便あります

元々1日2便運航していたBAは
数年間この成田国際空港にて1日1便にして運航していました

しかし、数年前に羽田国際空港が開港した際に
いち早く欧州便の中ではエールフランス航空と同様に
この便利と言われる羽田に乗り入れました

羽田国際空港
羽田国際空港 wikipediaより



現在は羽田国際空港発着便及び
日本航空(以下JL)との共同運航便を合わせると
最大1日3便の運航となりました

   


この数年の羽田国際空港が続々と各社参入し始め、
VSは成田国際空港に取り残されてしまった感があります

本来VSは羽田への参入を視野に入れていたが
新しい機材の納入が遅れ、出遅れてしまった・・・とか・・



VS 正面
VS正面 VS公式サイトより


しかし、それでも成田路線においても
欧州線は全ての航空会社が羽田への乗り入れができていない事実もあり
「羽田問題」だけでは希薄、とも感じます


今回VSの日本撤退において
公式プレスリリースではなく
関係各所から様々な憶測も出ていますが
やはり真意は??のまま・・・



以前ハワイアン航空が
いきなり日本事務所(日本での予約)が撤退しました
しかし、その撤退から約4年後に再び日本支社が復活


ハワイアン航空
ハワイアン航空 wikipediaより

私見としては“第二のハワイアン航空”のように
4年を待たずして復活して欲しい!

声を大にして・・戻ってきてね!と心から言いたい!!

太平洋横断路線も大事かもしれないけれど
レッドカラーの“イングリッシュ・ローズ”
を私達は待っている


イングリッシュ・ローズ
VSの機体に描かれたノーズ・アート
シンボルとも言える“イングリッシュ・ローズ”
wikipediaより



後日この「羽田空港問題」について
航空会社関係の方に尋ねたところ
成田空港と羽田空港使用については複雑な関係があり
それは日本の運輸省が定めたやり方に沿うと
現状すぐには解決できないのではないか・・・と・・・

そうなってくると今回VS撤退後
DLとの関係も含めると
なかなか日本へ復帰してくることは困難ではないか・・との見方でした



成田空港VS羽田空港の問題は
私達の耳には入ってこない複雑な絡みが思った以上にあり
今後日本の国際空港の在り方により
VSのみならず
外航(日本系以外の航空会社)全体の問題にもつながっているようにも思いました









様々なご意見おありかと思います
あくまでも私見の部分もございますこと
ご理解いただければ幸いです






こちらのページのご意見、ご感想などお待ちしております







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