やさしい個人旅行のすすめ【4】


お子様ランチ

B&Bとくれば次は
『イン』

この宿泊施設は英国での旅にご興味をお持ちの方なら1度は耳にされたことがあるはず

しかし、何故かまだまだB&Bに比べると我が同胞達の利用度が追いつきません
それにはこの『イン→旅籠』ですが、
パブというお酒の飲む場所での宿泊先・・というイメージがあって
女性、ご家族にはイマイチ利用しにくいのでしょうか・・?

更にパブ=『お酒』のイメージもあり、
お酒をたしなまない方々には入りにくいお宿なのでしょうか・・?




その昔・・・人々が旅に出る目的の一つとして
一般的だったのが「巡礼」でした
それは12世紀にまで遡る巡礼の物語チョーサーの『カンタベリー物語』にも
そのイン=旅籠を利用しての中世の騎士や修道士、
庶民の巡礼旅の様子が描かれています


もともと英国の歴史の中での宿泊施設としては、
この『イン』は最も古い宿屋形式です
それは、昔からエール(地ビール)は
この国では高価ではない栄養価の高い飲み物で、
また食事も出来、
その晩はその場所で休む→宿屋、という図式になるからです



ですから、そのインは街中であったり、
何もない荒野にポツンと建っていたり・・・と様々です
また、この国はどんなに小さな集落でも(村ですら成り立たない小さな集まり)
パブは1件は必ずと言って良いほどあり、
そのパブが宿屋を兼ねている
旅人にとってはこんなに便利なお宿はありません


カントリーサイドのパブの外観


パブなくしてはインのお話しは進まないのですが・・
ここでは『旅籠』としての現代の宿泊施設の一つとして
もっと個人旅行ならでは!の
この宿泊施設を愉しんでいただければ・・・と願わずにはいられないのは
インを利用しての旅人は少なからずそのように思うのではないでしょうか・・?

その理由には

目一杯歩き回り旅を堪能したその日の最後の締めくくりとして
美味しいエールと地元の方々の中に安心して身を置ける場所


その土地でしか手に入らない食材を中心とした郷土料理

(お好みに合うか・・・?どうか・・・?はお楽しみ 

そして、翌日のたっぷりとしたフル・ブレックファースト
(インでの軽い朝食にはお目にかかったことはありません!)

インは英国を代表するB&Bと同じようにルーム数もあまり多くはなく、
またスタッフも家族経営だったり、
昨晩のバーテンダーさんが翌朝も通いで眠い目をこすりながら
たっぷりと作ってくれる朝食は
自身で作る旅の宿泊宿ならでは密かな大きな楽しみなのです・・

残念ながらお子様をお連れでの旅では
そのパブでのお夕食はご遠慮願う場合もありますが、
古くからのパブですとレストランとしてのスペースを別に設けていますので、
その場所でならご家族揃ってのお夕食も可能です
(そして、お子様がお休み後はもちろん!階下のパブを楽しまれても・・・宜しいのでは・・? )

そのようなレストランスペースがない場合は
宿泊&朝食というB&Bのように利用されても宜しいかと思います


   






【ステップ3】

宿




たかが一晩・・されど一晩・・・
旅に出たら、私はお宿に関してはとてもシツコイくらいこだわります
それは日常では在り得ない、大事な1晩だからです
1日沢山歩き回った後にくる疲労感を癒してくれるのは・・・その晩の眠る場所
その寛ぎ感は翌日にまでとても大きく影響します


イン(旅籠) 上記のB&B同様この国を代表する宿泊施設です
もちろん他のお国にはありませんとは申しませんが、
やはりパブという文化が根付いているこの国ならでは・・と
言っても過言ではないかと思います




その4

イン
INN





私達が日常で『これが宿泊施設』という固定観念で考えれば
この「イン」ほどかけ離れた宿泊施設はないのではないだろうか・・?と私は常々感じます

英国のみならずお隣の国、アイルランドのパブも同様ですが
とてもとても古い歴史を感じさせるパブが沢山存在します
それは、建物だけでも何世紀も前のもの
店内に足を踏み入れるのは正直ちょっと旅人がはばかれるような・・
そんな雰囲気を持っているパブも多くあります
それはご承知の通り地元で住む人々のそこは『溜まり場』になっており、
よそ者(旅人)の私達が入りずらい・・・それが正直まったくない・・・とは私も言えません

しかし!
それがパブ=インになっていることによって、
インはすなわち『旅人の宿泊施設』
旅人は常によそ者であり、
その場所にはたったの1泊しか滞在しない事も数多く、通りすがりの者です
それによって、そのパブ・インはとても、とても、フレンドリー 
旅人なくしては“イン”ではありませんから・・

スタッフもパブの常連さん達も
逆にそこに宿泊する旅人には“おらがパブ”の自慢話に花が咲きます 
“このビールはよそでは飲めないんだ!”
“この地元で取れるトラウト(鱒)の料理は他の土地では口にできないぞ!”とか・・・
私達をほうっておいてはくれません 


パブの食事の一皿


インの外観    パブ部分

デヴォン州のインの食事・外観・パブ部分





ご自身でご旅行を作ろうとされる場合は航空券の次に、
ご手配されるのは宿泊先だと思いますが、
パッケージツアーのような旅の形態では
B&B同様にほぼ使われることのない宿泊施設でもあります

何故ならばそれはホテルに比べると部屋数も多いとは言えませんし、
旅行会社の主催されるツアーでのお客様は様々な方々が集まります
「お酒」をどうしても抜きには出来ない宿泊施設は
旅行会社さんとしては手配しずらい・・ということもありますでしょう・・・

ですから、“個人的嗜好”が色濃く出るこのような宿泊施設は
どうしても個人旅行でのご利用が大半になるかと思います


パブでのティー・タイム
パブではお酒類だけでなく、お茶やソフト・ドリンクは常にいただけます
居心地の良いパブのテーブルでお茶を楽しむ年配のご婦人達を見かけることも少なくありません


インでの宿泊料金はホテルなどに比べると遥かに低価格で
それはB&Bの次に当たります

ほとんどのインでは、朝食付き・サービス料・税込みの料金提示ですが、
中には由緒あるインや部屋数の多いインでは、
サービス料・税金が別途の場合もありますので予約時に確認が必要です

又、施設も他の宿泊施設同様にタオルやお茶のサービスは部屋に常備されていますが
洗面道具はご自身でご用意が必要ですし、
シャンプー・石鹸などのバス・アメニティは全ての施設であるとは限りません

提供できる宿泊施設設備のトイレ・バス・シャワーなどは古いインでは各部屋にはなく、
カントリーサイドなどのインにはまだまだ他の宿泊客との共同利用の場合もあります

しかし、近年建物の全体・外観・パブ内部は何世紀前からの趣きを残し、
客室部分だけは近代的にリノベーションしているインが増えてきたのでは・・・?と思います
その為各部屋に洗面・シャワールームなどを兼ね備えている・・・
そんなところがB&Bとは一線をおきはじめた・・
そんな印象を私自身最近感じます






【INNの名前】

インと言えばパブとは切っても切れない関係ですが、
ご承知の通りパブには『屋号』がついているものが多く、
それを示すものとしてはパブの看板にあります

パブの看板
街のおしゃれなインの看板・・現代風です

土地の狭い都会では、この看板を2階から突き出た腕木に道路に対して直角に吊るし、
スペースのあるカントリーサイドではお店の前の白塗りの柱にのっけているのをよく見かけます

英国を旅していてこの看板を一つ一つ眺め、
写真に収めるのも楽しみの一つですが
その看板(屋号)には全て意味があること
そして、その昔まだまだ文字が発達していなかった時代には
その看板で旅人(巡礼者)達は宿泊先として目指した目印でも会ったのです


その看板(屋号)ついてこんな愉しい一説が残されています
17世紀初頭の劇作家トマス・ヘイウッドから

紳士方がゆくのは『王頭 キングス・ヘッド』
貴族は『王冠 クラウン』
騎士は『黄金の羊毛 ゴールデン・フリース』
百姓は『田吾作 クラウン』
牧師さまは『司教冠 マイター』
羊飼いは『星 スター』
植木屋の通うは『ばら ローズ』
『太鼓 ドラム』へゆくのは兵隊さん
『羽根 フェザー』はご夫人専用で
『地球 グローブ』は船員専用
高利貸しは『悪魔 デヴィル』
町人は『角 ホーン』
猟師は『白鹿 ホワイト・ハート』
『船 シップ』へゆくのは貿易商
だが、詩神(ミューズ)を愛するあなたはポー河の『白鳥 スワン』へゆく
破産をすれば『世の終わり ワールド・エンド』
馬鹿者は『運 フォーチュン』へと急ぐ
ヴァイオリン師は『パイ』へゆく
*この“パイ”は鳥のカササギのことで“やかましい”の意味も持つそうです
*上記は『イン イギリスの宿屋のはなし』臼田 昭著より引用させていただきました


とても愉しい一説で
確かにパブの名前には上記を使った屋号が現在でも数多く残されています

又、逆にまったく意味の良くわからない名前の組み合わせを使った屋号も多く残されていますが・・
例えば、『猫とヴァイオリン キャット&フィドル』、
『山羊と羅針盤 ゴート&コンパス』、
『カササギと王冠 パイ&クラウン』などなど・・
これは一つ一つ意味ある単語を意味なく合わせたのではなく、
2つの店の合併とか
奉公後の徒弟が親方のお店の名をいただき、
自分でもう一つくっつけた・・とか様々な逸話が残されているそうです

そして、このような名前のパブ・インへと現在もその看板や名前などが続いている訳です 
名前(屋号)の由来を紐解いていくと沢山の面白い逸話が沢山出来てくるのも
インへ宿泊する楽しみの一つかもしれません 




【お勧めのイン】

シュルーズベリ
Shewsbury



私が初めて泊ったインが
これからご紹介する街シュルーズベリ(Shewsbury)の街・中心部に程近い昔ながらのインです

この街はハーフティンバーと呼ばれる木組みの街並みを
今に残す中世色濃いイングランドの中でも、とてもウェールズに近い街です


また、この街は12世紀半ばのシュルーズベリ修道院の修道士カドフェルさんが大活躍した街
この『修道士カドフェル』は
イギリスのシュロップシャー生まれのエリス・ピーターズという
一人の作家から生み出された最も古い時代の、
今で言う「探偵」になる小説シリーズの主人公が大活躍する舞台となる街です


私は何故この街を訪ねたか・・?というと・・・もうお分かりですね(^.^)  
架空ではありますが、本国英国では人気のテレビシリーズにもなり
何年か前には日本でもテレビ放送された
『修道士カドフェルさん』が活躍した街を実際に見て歩きたくなったのです
 

そして、この街で滞在した宿をどうしてもその時代にはあったであろう・・
インにどうしても宿泊したくなりました



英国内のシュルーズベリーの位置 シュルーズベリー周辺

“バックスヘッドイン”
Ye Bucks Head Inn


Frankwell,Shrewsbury,Shropshire SY3 8JR
Tel : 01743-36932

Ye Olde Bucks Head Inn, Inn Accommodation, Shrewsbury, Shropshire


シュルーズベリの街の地図


この街の中心はご覧の通りセヴァーン河がぐるっと、
まるでおたまじゃくしの頭のように取り囲んでいます
そのしっぽへ続くかのような場所に街への玄関口シュルーズベリ駅はあります

その駅からご紹介するイン・INN『バックスヘッドイン』は徒歩約20分

セヴァーン河にかかる大きな橋の一つ
その名もウェルシュ橋(Welsh Bridge)を渡りそのまま道成りに進んでから徒歩約5分
駅まではバスでも行けますが、
出来ればのんびりと荷物を担いで
このウェルシュ橋をゆっくりと渡りながらの眺めを愉しんで辿りつくのも良いものです・・

ウェルシュ橋から眺めるセヴァーン河の夕暮れ


            


ウェルシュ橋を渡ってから道なりに進むと
小さなラウンドアバウトがあります
その縁の一方に佇む“バックスヘッドイン”の外観です

表から見てみるとパブだけに見えるでしょう・・?
夕暮れの中でこの外観を見つけたらホッとしてしまうのは
パブ・インならでは
・・・後はゆっくりと飲んで寝るだけー


シュルーズベリのインバックスヘッドイン

インのシングルベッドに備え付けの真っ白のタオル
上はシングルベッド&タオルセット
    


★印が私の宿泊したシングルルームの部屋の窓


バックスヘッドインの中庭から宿泊施設を見る

表から見ると裏(中庭)がこんなに広いとは想像もつきませんでした
パブを通り抜けると(店内からはほとんど気がつかない)
宿泊客だけの階段を上り、2階へ
2階はコの字型のようになっていて中庭に面しています
表側の通り沿いには部屋はありません
私の★印の部屋は1階がパブのシングルルーム
心配した下の騒音はまったくありません
でした

下はベッドサイドの窓辺
とても風通しの良い部屋

ベッドの向かいは洗面&シャワールーム

部屋の窓辺
    


お待ちかねの夕食

    


残念ながら店内の写真が暗くて
撮影できなかった為・・
店内やスタッフの皆さんのお顔が
ご紹介出来ないのですが・・・

お昼は11時から14時まで
この時間は近所のおばちゃん達が
頑張っていました

そして17時になると本格的なパブの時間
責任者のマイケルとフィルが
バーカウンターの中に入ります
そして、お客サン達も
夕食を済ませた年配のご夫婦が一杯飲みにきたり
ご近所の友人達がグループで
おしゃべりをしきたり・・・

そんな中には旅のカップルや家族らしいグループ
私は一人窓辺のゆったりとした席で
美味しい地ビールを飲みながらの夕食・・
思いっきり寛いだ後はベッドへ直行→最高!





ンは残念ながら大きな街へ行くほど街の中心部にはなく、
郊外へ移動しなくてはなりません
特にロンドンではビックリ!するほどインを見つけることができませんでした・・

地方の自分の足で歩ける大きさの街ですと
比較的苦労なくご自身の気に入ったお宿を見つけることができます

このインの魅力を私自身もう少し詳しく今後もご紹介できたらな〜と
心から思わずには入られません



すっきりの喉越しぐー!ハーフパイントビール








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