Art しましょう



〜 美術館へ行こう 〜



Act.6


春真っ盛り!
今年の春は本当に最後まで“一体何時になったら暖かくなるの??”と
桜も一旦はつぼみも大きく開き始めた途端に雪??!!

数年前に訪れたロンドンでの3月終わり近くでは
もう1日1日暖かくなり
日本からもしも!の時のために
持参したジャケットが“無用の長物”に成り下がった年もあった、というに・・

考えて見れば毎年イースター近くになると
(イースターは毎年流動的に日にちが違います)
お天気が妙に崩れる・・という感もあります

もし!期待から外れて観光中にお天気が予想と反してしまった場合、
身近に“非難”できる博物館や美術館へ飛び込む!という・・
何故ならばロンドンには日本には余りない
無料!!で
楽しめる、学習できる、非難できる!場所が沢山あります

ショッピングなどにもちょっと疲れたら、
周りを見渡すとそんな便利な見所としても実際によく入る
ロンドンのギャラリー
(これは私だけかもしれませんが)



そんな偶然入ったギャラリーが思いもかけない楽しいことも多々あります

今回ご紹介するロンドンのギャラリーもそんな偶然の嬉しい発見でした

ショッピングとセットで立ち寄り可能な、
駅からも近く、判りやすい、入りやすい
「The Saatchi Gallery」
覗いてみてはいかがでしょう!








ロンドンの美術館

The Saatchi Gallery

サーチ・ギャラリー
The Saatchi Gallery

今回ご紹介するサーチ・ギャラリーは
公共が立ち上げた美術館ではなく
個人の所有する美術品を展示したギャラリーです

ヨーロッパ・アメリカ・中国など世界中に展開する広告代理店
“Saatchi & Saatchi”の創業者
アート・コレクターでもあるチャールズ・サーチが
1985年以降に
自身が集め所有している美術品を展示したことから始まりました




しかし、やはりあくまでも「個人所有」ということで
その所有者が時代の流れとともに
財政難に陥り・・
集めた高価な作品達のほとんどを手放す羽目になりました

その個人ギャラリーは一旦は幕を閉じますが、
その後数年してサーチ氏は
再び今度はまだ無名の現代芸術家達の作品を
蒐集することを始めました

その当時はサッチャー政権の時代で
芸術に対しての援助を切り詰められた時でもあり
若い芸術家達は自分自身達で
まだ未開発だったロンドンのドックランズの廃倉庫などを利用して
発表の場として活動していました


ロンドンの現在のドックランズ
現在のドックランズは“カナリーワーフ”として大きく変貌しています
wikipediaより




そのドックランズで行われた
フリーズ/Freezeというインスタレーションなどによるグループ展は
現在のヤング・ブリティッシュ・アーティスト(
YBA)の元にもなっています

そのフリーズでの活動から
今では現代芸術家としても、
YBAとしても代表的な存在でもある
ダミアン・ハーストらをその廃倉庫で最初に見出したのが
このチャールズ・サーチでした

ダミアン・ハーストの作品
ダミアン・ハーストの作品
「水槽の中の羊」


その後1990年代、2000年代と
次々にそのような若手の芸術家作品を再びコレクターし始めたサーチは
YBA達にとっては最も理解ある庇護者でもあり、
その中からイギリスの美術界でも権威のある
あのイギリス誇るロマン派の画家、
ターナーの名にちなんだ「ターナー賞」を受賞する芸術家達も出てきました


テート・ギャラリー
ターナー賞の受賞場所となるテート・ギャラリー


“ターナー賞”とは1984年から始まり、
イギリス在住の50歳以下の芸術家に送られる賞です

若手芸術家を刺激する意味においても
絵画に留まらず、彫刻、映像、立体、ビデオと
幅広くの分野からの受賞者達がいます

受賞作品への賞金はスポンサーである企業だったり、
現在では著名人、テレビ局などからも提供があり、
特に授賞式はテレビのチャンネル4でも大々的に放送されるため
その式には俳優やミュージシャン(セレブと呼ばれる人々)などの出席により
毎年多くの話題を呼んでいます





そんな発端から現在のサーチ・ギャラリーは
話題や芸術部門においても
常に“動きのあるギャラリー”とも言えそうです


サーチ・ギャラリー
現在のサーチ・ギャラリー
チェルシー地区 高級食材店パートリッジのほぼ真向かい



さて、そんなサーチ・ギャラリーは現在の場所へ移るまでは
かなり紆余湾曲していたように思います
(元々現代芸術に疎いため・・
このようなギャラリーには今まで足が向くことがありませんでした
私自身の勉強不足もあり、
ご案内が不十分で申し訳ありません・・




先ずは立ち上がりの2003年から2005年の間は
ロンドン・アイやロンドン水族館が近くに立ち並ぶ場所でもあるため
観光客が多く集まる
サウスバンクで開館していました

その頃は大きな空間を持つことができた建物だったので
現代芸術家達の大きな作品を常設展示することもでき、
当時かなりの話題性を呼びました

英国内新進気鋭のYBAたちの
斬新な作品を次々に発表できる場になった訳です


しかし、2004年のイギリス最大の美術運送・保管業者モマート社の倉庫火災で
まだ展示できなかった多くの美術作品が消失する、という事件が発生し、
このサーチ・コレクションも
主要な作品を含む100点以上の作品が炎と共に消え去ってしまいました

サーチ自身もこの出来事に大きな落胆は隠せなかったそうです・・・


カウンティ・ホールのサーチ・ギャラリー
サウスバンク カウンティー・ホールにあった時のサーチ・ギャラリー
(2003年 wikipediaより)



また、その頃からサーチ自身が
自国の若手芸術家より
欧州各国の芸術家への興味が移っていく、ということもあり
その個人所有していたYBAの作品の多くを
オークションなどでの売却により、
自国の作品がアメリカなどへ流出していく・・という事態をも引き起こしていました

そして、2005年
カウンティ・ホールでのオーナーとのトラブルが元で
(そのオーナーが日本企業だったことは当時大きな話題にもなりました)
結局はその訴訟で敗訴したサーチ氏は
このギャラリーを
現在のチェルシー地区に使われていなかった
陸軍兵舎跡(ヨーク公邸、Duke of York's Headquarters)に
移転することを決め、
2007年にその新しい場所での再スタートを発表しました


チェルシー地区のサーチ・ギャラリー
スローン・スクエア駅から徒歩3分のチェルシー地区
ヂューク・オブ・ヨーク・スクエアを抜けるとすぐにこちらの入り口が出ている



しかし・・実際はその新しい場所での開館は遅れに遅れて
2008年の10月に再びオープンしましたが、
以前のようにYBAの作品がメインになる、という常設展示も少なくなり、
中国などを始めとする韓国やアジア、
アメリカなどのコンテポラリーな若手芸術家の展示も多くなっています

ニューヨーク在住のアーティスト
右の展示物の作者
ニューヨーク在住のアーティスト
 Matt Johnson
ピアノマン
折り紙のようにも見えるBlue tarpと紙、ステンレスを使用
ピアノは原寸・・? “The Pianist”


しかし、その展示された現代芸術品の数々は
如何にも“個人的な・・”要素もあり、
公共の歴史ある他のギャラリーとは一線を期した
若々しいエネルギーに満ち溢れた場所として
思いがけない面白さが詰まったギャラリーのように思いました




そんなエネルギッシュな若いギャラリー!
サーチ・ギャラリーのご案内をいたします


行き方 地下鉄 : スローン・スクエア駅より徒歩3分
バス   : 11,19,22,49,211,319番 (King's Road),
       11,137,211番 (Lower Sloane Street).
       *運転手さんにギャラリー近くの停留場下車を伝えてください

     
住所  Duke of York's HQ King's Road London SW3 4SQ
MAP

Tel (020) 7811 3085.

Open 10:00-18:00  最終入場時間  17:30
無休 *但し不定期にて閉館日あり サイトより事前の確認をお薦めします


入場料 無料


サーチ・ギャラリーの入り口
新しい2008年のオープンしたサーチ・ギャラリーの正面入り口


お気に入りのショッピング通りでもある
King's Roadへ向かう駅は地下鉄Slone square駅


その駅から徒歩約5分も駅を背にして大通り沿いへ歩くと
左手方向に大きなゲートがあり、
縦字で大きく「SAATCH GALLERY」


そのゲートをくぐると大きなレンガ造りの3階建ての建物が目指すギャラリーです

高い天井を見上げるようにして左右に展示室が見えてくるので
エレベーターで一気に上の階へ上がってから
各展示室を見ながら下がるのも良し!
1階展示室を番号のルート案内通りに進むも良し!

どこから歩いても各部屋の展示物は各部屋独立した展示物になっています

Agathe Snow 2007
No.1展示室 Agathe Snowの造形芸術

No.2展示室
展示室一部屋が大きく、天井からの採光は抜群

絵画を背して
壁にかかる絵画を背に別の展示物を見るビジター

Kristin Baker 2006 “The Raft of Perseus”
Kristin Baker “The Raft of Perseus”2006

Jonas Wood 2008 “Untitled(M.V.Landscape”
Jonas Woodの“Untitled(M.V.Landscape”

Stephen G.Rhodes 2006 “Ssspecific”
毒蛇が四角い箱を飲み込んだような造形物

Francesca DiMattio 2007 “Tunnel”
壁にかかる大きな絵画は“トンネル”という名

Ryan Johnson 2008 “Sentinel”など
大きな造形物 4体あり全て名前が違う

Guarra de la Paz 2007 “Nine”
奥の小山は洋服の山 しかし、よく見ると下に足

Peter Coffin 2007 “Untitled(Spiral Staircase”
No.10の展示室入り口正面の“螺旋階段”とビジター


中でも面白かったのは下の3点

Paul Lee 2007 “Can Sculpture”
Paul Leeの連作
ソーダ缶とタオルを使用して

Ryan Johnson 2008 “Wachman”
Ryan Johnsonの4体の一つ
“Wachman”

Guarra de la Paz
Guarra de la Pazのユニット作
下に人の足が見えますでしょうか・・?

そして、最上階へ行くとそれぞれのアーティスト紹介があり、
これを造ったのはこの人なのね・・・と・・・


アーティストと作品の紹介
それぞれの展示物とその作者の紹介が写真入りで説明しています


そして、今回訪れた時に特別展として開催されていたのが
「KOREAN EYE」という韓国の現代アーティストの展示でした


特別展の入り口
個人的にはこの入り口の“走る骸骨”が気に入りました


一つの階の半分、という小さなスペースでしたが、
中々面白い作品が展示されていて
ここでの見学者が1番多く感じられました


大きなカンバスの絵画
作者が判りませんが、かなり大きな油彩画です

その真ん中
その中央にニッコリとしている小船の女の子

韓国家族
会場で1番人気だった“Korean Family”

人面魚?
その“韓国家族”を真正面から見ていた少年

韓国家族と老人
その韓国家族と記念撮影する
ビジターのおじいちゃん
まじかに見る韓国家族
目の錯覚ではありません・・近くで見ると
本当に上から押しつぶされたような家族でした

上から押しつぶされたような人物像って
見ていると目の錯覚に陥りそうですが・・・記念撮影しているビジターの多いこと
おちゃめな英国のおじいちゃんは
その後にはおばあちゃんも撮影していました




今まではこのような“造形物”を見る機会は少ないので
沢山の現代芸術作品を貯蔵している、と言われる
このギャラリーでの展示物は広い空間の下
のびのびとしていてのんびり、ふらっと立ち寄る、というスタイルが
何となく気持ちの余裕を作ってくれそうにも思えました

ギャラリーの窓から
展示室の間の窓から見えるヨーク・スクエアの緑


展示している作品との間の大きな空間は
その作品同士がそれぞれに持つ
空気の流れを作っていて、
お互いに喧嘩しないように・・・
その作品達が持っている、それぞれの空気が混じらないように・・・

そんな見る側にとっても
一つ一つの作品をじっくりと堪能できるような
そんな展示の様子に
何故か伸び伸びとした自分を取り戻したようにも感じました





最後はやっぱり素通りできない
ギャラリー・ショップです


サーチ・ギャラリー・ショップ
すっきりとした色調のギャラリー・ショップ
オリジナル展示物の小物やアートブックも充実しています


そして、ショップを堪能した後は
ギャラリー・カフェでの一服はこれからの季節にはもってこいです

この界隈のでショッピングと合わせても
このカフェ&レストランはお薦めです


ギャラリー・カフェ&レストラン
閉店間際だったので人もまばら

入り口の並びにあるこのカフェ&レストランは外のテラスから埋まっていきます

スターターから始めるメインコースも充実していますし、
軽食にもOKのペストリーや
午後2時半からのアフタヌーン・ティー£14.50はお手頃です




賑やかなキングス・ロードからの喧騒が
うそのような静かなこの場所は
テラス席ので目に映る風景は抜群でしょう


英国王室御用達ショップ パートリッジ
向かいに見える英国王室御用達食材店
パートリッジ


今回は現代芸術の宝庫
サーチ・ギャラリーをご紹介いたしました

是非、ちょっと一息・・という時にでも思い出してくださいね










*こちらのページでご紹介差し上げているご案内に関して
万一誤った箇所がございましたら
どうぞ、その旨ご指摘いただけますようお願い申し上げます

また、ご意見、ご感想、お問い合わせもお待ちしております





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