Art しましょう



〜 美術館へ行こう 〜



Act.3



秋深まるとついつい屋外に入りたくなってしまうこと、
日々陽の長さが短くなることが目に見えて判ると
その1日を目一杯使いたくなって・・・


そして、日頃何かと穏やかに過ごせない私にとっては
好きな絵の前で何時までも時間を気にせずに眺めていたい・・・

そんな気持ちでロンドンを訪れることが
しばしばあります

何が有難いって・・素晴しい名画を見るために
「無料」とういう素晴しい響きは何事にも返られない
一つの要因にもなります

ご承知の通り
“陽の沈まない大英帝国”
ご自慢の国立美術館はロンドン市民が何時でも気軽に立ち寄れるようにと
あの大きな街の中心部
トラファルガースクエアに出来上がったのは今から150年ほど遡ります


ナショナル・ギャラリー入り口
現在のトラファルガースクエアの
国立美術館正面



ライバルおフランスのルーブル美術館の優雅さや
芸術面では長年の友好国でもあり
ある種の“師”となり
様々な英国お貴族の子弟や芸術家を懐に抱いてくれた
イタリア〜のウフィッツィ美術館の大きさには程遠いけれど・・・

それでも国を支える労働者階級の方々にも
広く門を開けたギャラリーとして当初誕生した
英国・ロンドンの国立美術館(ナショナル・ギャラリー)は
英国民の誇りでもあります

そんな逸話を聞いてから
ますますこの美術館へ足を運ぶようになったことは言うまでもありません

そして、近年私達にも馴染み深いスーパー・マーケットでおなじみの
セインズベリー棟もすっかり出来上がって益々充実したギャラリーになった
ナショナルギャラリー

ナショナルギャラリー・セインズベリー棟入り口
ナショナルギャラリーセインズベリー入り口
ナショナルギャラリー本館と繋がる
セインズベリー棟を本館から





セインズベリーギャラリーショップ
セインズベリー棟のギャラリーショップ


そして、その国立美術館の正面右手側に回ると
もう一つ私にとっては興味深いギャラリー
『国立肖像画美術館』

ポートレートギャラリーがあります


ポートレートギャラリーへ
ポートレートギャラリーへ

実はこのギャラリーを知ってから
ある意味での本当の「英国」の顔を飽きることなく眺められる
そんなもう一つの場所が
私のロンドンの中でも指折りの大好きな場所


今回はこちらのギャラリーをご紹介をいたします










ロンドンの美術館


国立肖像画美術館


ナショナル・ポートレート・ギャラリー


年このギャラリーは150周年を迎えました
創立は1856年3月4日
上院議会にて
フィリップ・ヘンリー・スタンホープ等有志たちの賛同のもと
このギャラリーの設立が政府により承認され、
その議会から£2,000が投じられ始まったこのギャラリーは
その後貴族達の寄付もあり
徐々に集められた肖像画は現在約9000点にも及ぶそうです

その肖像画全てが正しく英国史の象徴でもあり
この国の歴史を知るのに
実に楽しく興味深く知ることのできるギャラリーであることと思います

集められた絵画の歴史は15世以前まで遡り
英国史の中でも最も冷酷な王とまで言われたリチャード3世の
「お見合い用ポートレート」として名高い彼の肖像画から
新しくは現在のベストセラー作家・あのハリー・ポッターの生みの親
J ・K ・ローリングス女史も
今年お目見えとあって話題は尽きません




ナショナルポートレートギャラリーの入り口
ナショナルポートレートギャラリーの入り口

行き方 地下鉄ノーザン線・ベーカールー線 Charing Cross駅より徒歩約3分
住所  2 St.,Martins PL.WC2

Tel (020) 7312-2463  テープでの案内 fax : (020)7306-0056

Open 月〜日曜日 : 10:00〜18:00  木・金曜日 : 10:00〜21:00まで
*月曜日の朝は従業員の方々の研修のため2・3階の開場は11:00〜
*金曜の夜は無料の音楽イベントが開催されます
*閉館準備は閉館時間の10分前から始まります
*Close : 12月24、25、26日


入場料 基本的には無料ですが(善意の寄付は常に大きな手を広げてお待ちしています)、
特別展のみ、その都度料金をいただきます


国立肖像画美術館地図(ロンドン) 国立肖像画美術館地図

ナショナルポートレートギャラリー ナショナルギャラリー入り口
ナショナルギャラリー
トラファルガースクエア チャリングクロス駅
ピカデリーサーカス レスタースクエア






世界最大のコレクションを誇るこのギャラリーは
現在約1,300点の作品を展示しています

英国歴代のロイヤルファミリーから
ナイチンゲール、ダーウィン、ビートルズなど
年代順に最上階3階(Scound floor)にはチューダー王朝初期の肖像画、
次ぎの2階(First Floor)には16,17、18世紀からヴィクトリア時代、
そして20世紀前半までの作品、
1階(Ground Floor)ではコレクションの中でも最も最近の作品が展示されています


ナショナルギャラリー入り口インフォメーション
ナショナルギャラリー入り口付近のインフォメーション


トラファルガースクエア正面のナショナルギャラリーの右手側を
くるっと回るような感じで小さな入り口があります

その入り口を抜けると上記のインフォメーションがあり
写真撮影はここまで

このインフォメーションから
一気に3階まで上る長いエスカレーターがあります

そして、展示は古い年代からの経路になっています

その膨大な展示物から1部ご紹介しましょう
(これはナショナルポートレートギャラリーガイドブックより抜粋になります)

ナショナルポートレートギャラリー公式ガイドブック
公式ガイドブック


トーマス・モアの孫 トーマス・モアファミリー肖像画
上記の絵は『ユートピア』の著者であり
イギリスルネッサンス期の法律家でもあり、
下院議員でもあったトマス・モアの
ファミリー肖像画の1部です

左の男性はそのモアの孫にあたり
この大きなモア一族を描いた人物でもあります
(絵の1部の抜粋)

1529年大法官まで上り詰めたおじいさんに当たる
トマス・モアの
当時の家族を描いた1枚ですが
その中に当然まだ生まれていない自分を
この絵を描いた当時の自分の姿もこのように登場させています

トマス・モアは
ヘンリー8世が離婚をしたいがために設立してしまった“イングランド国教会”に
カソリックの立場から反目し、大法官を辞任しました

その後査問委員会にかけられて
ロンドン塔に幽閉され
1535年に処刑されてしまいます

しかし、カソリック教会の殉教者として現在も列聖されています

そして、彼の残した『ユートピア』は
自由平等の共産主義的な考えとして
カトリック教会の教えによる
平和主義と社会正義を求めた著作としても
現在でも生きています

3階に上るとすぐに大きなこの1枚の絵が展示されていますので
どうぞ、描いた孫の作者ハンス・ホルバインを探してみてください





リチャード3世
リチャード3世
エリザベス1世
エリザベス1世


そして、右はシェイクスピア悲劇でも有名なリチャード3世
1452年生まれのエドワード3世の祖孫に当たり
ヨーク公リチャードの8男
即位前はグロースター公で
在位は1483年から85年までのたったの2年

様々な歴史上でも興味深い英国国王の一人です

シェイクスピア史劇のでお話での人物像が
近年になって史実は違ったものではないのか・・?という疑問がもたれ
今後の真相究明が待たれている、という・・・


左は説明なしのエリザベス1世
彼女の肖像画は数多くあり
その中でも最も豪華な衣装を身に纏った1枚です
この衣装は当時様々な各州のお貴族様が
女王のご機嫌を取るために
このような豪華な真珠をちりばめた衣装を送り
そして、その絵の女王の足元にはイングランド地図が描かれています
この衣装と絵を送ったのは
オックスフォード州のヘンリー・リー卿

この当時すでに跡継ぎのいない女王に
多くのお貴族達が虎視眈々と時代を作ろうとしていた時でもあります






徐々に時代は進み
経路順序も判りやすいように案内してくれています


イングランドはエリザベス1世時代に
スペインの無敵艦隊を破ったとして
強い海軍王国としての基礎を作った時代の女王でした
それは元々海賊であるフランシス・ドレークの功績を認め
「サー」の称号を与えました
のちに海に囲まれ、
数十キロ先には列強の大陸の国々から常に脅かされながらも
次ぎの時代に再び『海軍国』として不動の地位を築いたのが
世界三代提督のうちの一人
英国誇るトラファルガースクエアに現在も君臨している
ホレイショ・ネルソン提督です



ホレショ・ネルソン提督
ホレイショ・ネルソン提督

1758年教区牧師の第6子として生まれたホレイショは
1770年12歳の時に病床についた父に代わり
家計を助けるために
母方の海軍軍人だった叔父を頼り海軍に入ります

その後海軍において徐々に頭角を表し
1779年21歳で勅任艦長となり、
歴史上最も有名な1805年の
英仏戦争トラファルガー海戦において倒れるまで
その間独立したばかりのアメリカ独立戦争、
1793年のフランス革命戦争により初めての地上戦を指揮し右目を失い
1797年当時スペインの植民地カナリア諸島にて
スペイン艦隊との戦いで右腕を負傷切断し、
片眼隻腕の提督となりました

1805年最後の戦いとなった英仏戦争でのトラファルガー海戦にて
英国海軍はネルソン提督率いるヴィクトリー号で勝利を収めますが
彼の発案した艦隊同士の接近戦により
フランスの狙撃手により凶弾に倒れます

ヴィクトリー号の甲板において艦隊を指揮していた彼は倒れながらも
最後の言葉を各員への指示として
接近戦を続けよ、という意味のメッセージが
あの有名な提督の最後の言葉になったと言います

“England expects that every man will do his duty”
『英国は各員がその義務を全うすることを期待する』

翌年、君主以外では初となる国葬としてセント・ポール大聖堂に葬られました


高校時代に英国海軍物語に、はまりまくったきっかけは
ネルソンさんの最後の言葉
若いなりに感動し、
その後のヴィヴィアン・リーとローレンス・オリビエとの名作
「美女ありき」でためいきをついたのは言うまでもありませんでした

そして、ロンドンでのトラファルガースクエアでは
遠く高い位置のネルソン提督に
挨拶を欠かさずしています


トラファルガースクエアのネルソン提督像
黄昏のネルソン提督像
トラファルガースクエアにて






それぞれに時代の
それぞれの分野に偉大な人々を生み出した英国は
その年代に合わせてその人となりの足跡を残しています

文学についてもそれは多いに言えることで
下の3つのポートレートは私にとってとても印象深いものです



ブロンテ姉妹 ヴァージニア・ウルフ オスカー・ワイルド

左の3姉妹はご承知の方も多い英古典文学でのブロンテ姉妹です
1820年にハワースへ移り住んだあとに
彼女達の偉大な作品が次々に生まれています

向かって右から姉のシャーロッテ、次女のエミリ、妹のアンです
3人はヨークシャーのソーントンという村の牧師の娘として生まれ
母と2人の姉妹を次々に亡くしていますが、
その悲しみをそれぞれに乗り越えて
あの壮大な物語を生み出しました

3人で詩集『カラー、エリス、アクトン・ベルの詩集』を自費出版したあと、
まるで生き急ぐように作品を発表しました

それが、シャーロッテは『ジェーン・エア』
エミリは『嵐が丘』、
アンは『アグネス・グレイ』
しかし、3人とも残念ながら短命で
その短い生涯で上の3つの代表作を残しています

彼女達の貴重な姿を留めたこの1枚の絵は
たった一人の画家志望であった弟ブランウエルが描いたあとも
長い間たんすに折りたたんでしまい込んでいたため
折り皺がそのまま残った状態で今の世に出ています

本来はシャーロッテとエミリとの間に
描いた本人でもあるブランウエルが描かれていたのですが
あまり画才のない自分の絵に自分自身だけを塗りつぶしたため・・
バランスのあまり良くない仕上がりですが、
しかし・・彼等の姿を留めたものとしては
とても貴重な1枚になっています



中央の女性は1882年生まれの近代小説家である
ヴァージニア・ウルフ
代表作としては
1925年発表の『ダロウェイ夫人』、1927年『灯台へ』など
1841年に入水自殺するまでに12作の作品を残しています

残念ながら作品を読んだことはありませんが
ただただこの1枚はなんて美しい横顔だろうと・・・

59歳で生涯を閉じた彼女のこの美しいポートレートは
1904年の20歳のときのもの

33歳で初めての作品『船出』を発表
それからの作品は女性問題、フェミニズムと
生涯神経的発作に悩まされながらも自己の道を探りながら
そしえ、最後は自ら幕を下ろしたヴァージニア・ウルフ

彼女の生きた時代に思いを馳せながら
「意識の流れ」の手法を用いた作品はどんなものだろうと
想像せずにはいられません



さて、最後の3枚目右の男性も
1度は目にされていらっしゃる方も多いことでしょう

本名オスカー・フィンガル・オフレアティ・ウィルズ・ワイルド
通称オスカー・ワイルド
1854年生まれのダブリン出身の作家、劇作家です

ヴィクトリア時代の英文学作家の代表作家の一人です
代表作に戯曲『サロメ』や
小説『幸福な王子』『ドリアン・グレイの肖像』など数々の作品を生み出しながらも
数奇な生き様と一生を過ごした彼については
その生涯そのものが“小説”だったように思います


それでも現在残っている彼のポートレートは
とても裕福な彼自身の時代を象徴するかのようなもので
殊更悲しいものに見えて仕方ありませんでした








3階から1階まで時代を追っての散策は
本当に何時間時間があっても足りません

最後の1990年以降の英国では
私達には解説のいらない
ホーキンス、リチャード・ブランソン、デヴィッド・ボウイなどの肖像画が
通常展示されています

また現代画の象徴のようにウォーホールの作品が壁に並べられている様子は
本当に現代に引き戻されたような強い引きを感じます


いつか・・遠い未来で彼等にも1枚1枚に解説が載せられ
それを読んで楽しむギャラリーが出てくることが・・
そして、その場面が容易に想像できることが
なんとも不思議な空間に思えてくるのです








ギャラリーのサイトには更に詳しい案内が載っています
どうぞ、お出かけになられる際には是非ご確認を・・・


National Portrait Gallery



こちらの最上階のザ・ポートレートレストランはお勧めです
是非ご予約をされていからいらっしゃった方が宜しいかと思います









*こちらのページでご紹介差し上げているご案内に関して万一誤った箇所がございましたら
どうぞ、その旨ご指摘いただけたら嬉しいです
何卒宜しくお願い致します






このページに関してのお問い合わせ、感想などをお待ちしております




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