◆◆ 博物館へ行こう ◆◆◆






Act.1


ご承知のとおり英国・ロンドンには数多くの博物館があります

世界に誇る大英博物館、
美術工芸品を結集させたヴィクトリア&アルバート博物館、
子供達に大人気の自然史博物館

年齢問わず何時訪れても、何度足を運んでも・・・
決して時間の限られた旅の中では
全てを観ることが出来ないくらい多くの展示物がご自慢の博物館ばかり

国全体が「古いもの」を良し!とするお国柄
街全体が“博物館”としても決して誇張とは言えない英国

初めてこの国に足を踏み入れた20数年前から
旅の中で1つは観光ルートに入れていた博物館

しかし、その大きさ、広さ、展示物に圧倒されて
何時の間にかご紹介するのに逸してしまった見所の一つ

その余りの広大な建物の中で
どれが限られた時間の中で見るべきものか・・?
こればかりはパッケージツアーに組み込まれた
ガイドさん付きのコースが良いな〜とも思っていました

しかし、度重なる(と、言ってもそれ以外はないので・・・)個人旅行の中で
自身でも何度も訪れたロンドンの博物館たち

やっぱり、そんな訪問でも“行ったんだ!何度も見た!本物のミイラ!”
・・・本当に大英博物館というと必ず見るミイラの数々・・・
これしか憶えてないっつうのも情けないのですが・・・

これから少しづつのご紹介でも
また、ほんのちょっぴり“さわり”でも・・
皆様の旅の指針になれば嬉しいな〜と思い・・遅まきながら
『博物館編』

決して見るべきもののポイントのみをご紹介、
と言う便利なページにはならないかもしれませんが、
こんな旅もしているんだな、という感じで
少しでも楽しんでいただければ幸いです









:: ロンドンの博物館 ::

サー・ジョン・ソーン博物館
The Sir John Soane's Museum


この博物館を初めて知ったのは某テレビ番組の中で
“この博物館へは世界で初めてカメラが入ります!”という
「ロンドン特集」の中での1場面でした

個人名である名前の博物館は例えば
“シャーロック・ホームズ博物館”とか
“フローレンス・ナイチンゲール博物館”くらいしか思い出せない私は
聞きなれない“サー・ジョン・ソーン”という名前には一瞬???でした・・

しかし!・・・あっ!そうだ!
以前行ったロンドンの西南ダリッチ・アート・ギャラリーの説明にあった
あの建物を建築した建築家さん・・・

ダウィッチ・ピクチャー・ギャラリー
ダリッジ・アート・ギャラリー wikipediaより

このギャラリーは1811年から14年にかけて、
サー・ジョン・ソーンの富裕な友人が亡くなった際に
所蔵していたコレクションを公開するにあたって、
その場所としてこの建物を建てるため、建築家の彼が3年をかけて造った場所

ダウィッチギャラリー内部
ギャラリーの内部wikipediaより

アーチ型の天井から自然光を上手に取り入れたこの建物は
その3年後にダリッジ大学が見事にこのギャラリーを運営、オープンさせ、
当時としては(現在にまで)斬新で数多くある
自国英国絵画を含む偉大なる遺産を
見る人々にも解りやすい構造にと仕上げました

後に1818年には彼の最も大きな代表作となるイングランド銀行と
現在はミュージアムになっている自邸があります

しかし、現在のイングランド銀行は1925年に大改装が行われたため
当初サー・ジョン・ソーンが建築した部分は
残念ながらほんのわずかしか残されていないそうです

イングランド銀行
サー・ジョン・ソーンが建築した1818年のイングランド銀行wikipediaより



このミュージアムは
ジョン・ソーンという人柄を知る、ということも然りですが、
英国人特有の蒐集癖(?)を
“大英博物館”という“大きな箱”で見るより
最も凝縮されたこの“小さな箱”で
貴重なもの、面白いものなどを見学するにあたって
効率よく、歩き疲れることなく、
また個人の邸宅ということもあり、
その所有者であるコレクターの生きた時代をぎゅっと封じ込めた・・
(と、言うと摩訶不思議な何でもないもの・・がらくた類・・・もある)
そんな、愉しめる博物館としてもお薦めです









サー・ジョン・ソーン博物館はロンドンの中でも
最も小さな国立博物館です

18世紀から19世紀に活躍したジョン・ソーンが
実際に住んだ家をそのまま博物館にしたものです

そして、展示物は全てこの一建築家が生涯をかけて
個人的に蒐集した様々な美術品、工芸品などを展示しています

ですから、他の博物館(大英博物館など)に比べて
ジョン・ソーンが亡くなってからこの家ごと国に寄贈されたコレクションなので
それから展示物が増えることなく
そのままを維持し、国が保護しています


サー・ジョン・ソーンミュージアムの外観
サー・ジョン・ソーンミュージアムの全景


場所はロンドンの中心地
地下鉄ホルボーン駅からも程近い
リンカーンズ・イン・フィールズという緑美しい公園に面した
ジョージア朝式住宅街の中にあります


リンカーンズ・イン・フィールド
ミュージアムの前のリンカーンズ・イン・フィールド


金融街にも徒歩で行ける圏内のため
法曹界の事務所が多い地区になりましたが、
ホルボーンの大通りを1本入っただけなのに
その喧騒とは無縁のとても静かな一角にあります

行き方 地下鉄 : ホルボーン駅(Holbon)より徒歩5分くらい
       Map of Lincoln's Inn Fields

住所  13 Lincoln's Inn Fields WC2

Tel (020) 7405-2107

Open 火〜土曜日 10:00〜17:00 (最終入場16:30)
*第一火曜日の18:00〜21:00のみ、蝋燭の光だけで見るキャンドル・ナイトを開催
 (最終入場20:30)

Close : 日・月・祝、1月1日、グッドフライデー、12月24〜26日 

入場料 無料
*英語ガイドツアー 土曜日 11:00からスタート (受付は10:30〜)  £5.00


ジョン・ソーンは1753年〜1837年の生涯で
れんが工の息子として生まれ、
その後ロイヤル・アカデミーで建築を学び、
その在学中にコンペで金賞を受賞、
それにより奨学金を得て1776年にイタリアへ留学しています

一旦はローマでの就職を試みましたが、
中々職を得ることができず帰国します

そして、代表作となる1787年にイングランド銀行の建築家に就任し、
80歳の年齢に至るまでこの巨大な銀行建築の公認建築家と検査官を務め、
またその間にロイヤル・アカデミー
(当時はサマセットハウス内にあり、現在はピカデリーにあります)の
教授でもあった彼は建築家としてだけでなく
教育者としても名を残しています


そうした功績により50歳の時1803年にナイト/サーの称号を授かりました

サー・ジョン・ソーン
サー・ジョン・ソーンの肖像画
wikipediaより


元々は労働者階級の出をあったことや
その後の建築家、教育者としての功績でも
このリンカーンズ・インでの現在博物館になっている家12,13,14番の家の購入は
本人だけの力ではなく、
ソーン夫人の叔父ジョージ・ワイアットの遺産で手に入りました

それをサー・ジョン・ソーンが内部のみを取り壊し、
彼のデザインで新たに現在残している住居に立て直したものだそうです


ですから、一見外から見る限りでは
何気ない入り口に見えないこの博物館は
この建物特有の狭い玄関ホールを抜けた途端に
3つの家を摩訶不思議な迷宮のような空間に仕上げた
建築家としてのソーン家に
訪れる人々は魅了されてしまうのだと思います



そんな期待をしょって・・・
ロンドンの中心地Holbon駅を降り立ったのでした






ロンドン1とも言われるくらい
最も面白いミュージアムとして君臨する
サー・ジョン・ソーンの家は
下のプレートとその入り口に立つスタッフのおじさんが居なければ
本当に通り過ぎてしまいそうでした



入り口の案内
入り口の案内

日によっては来場者が多いために
この入り口で案内するスタッフのおじさんは
時にはその入場制限をするためと
また来館者に先ずは一通りの説明をしてくれます

荷物は貴重品以外は全て預かること
(これは後に解ったのですが、
展示品がとても多いために
来館者の荷物で展示品を傷つけないためなどもあるとのこと)、
写真撮影は一切禁止であることなどです

そして、玄関ホールで来館者名簿に署名して、
荷物を預かってもらい、下のパンフレットをいただき・・・

いよいよ入館します

ミュージアムのパンフレット
入り口でいただける館内のパンフレット


狭くて暗い玄関ホールから最初の部屋は
通りに面した真ん中の13番番地のグランド階(日本で言う1階)の
『Library-Dining Room』です

縦長の床まである大きな窓からの採光で壁一杯の重厚な書棚も明るく見えます


図書館とダイニングルーム
図書館とダイニングルーム(ポストカードより)

このダイニングルームの暖炉の上に
サー・ジョン・ソーンの最も見覚えのある本人の肖像画が置かれています

図書館の部分とダイニングルームの部分の仕切りはなく、
ただ、廊下に面したドアがそれぞれ違うので
その仕切りを取っ払ってつなげてしまったのか・・・?
とても、広々とした空間を造っていました


このダイニングよりの左手側には小さな小部屋になった
天井に美しいドームを掲げた
『Breakfast Parlour』があります


朝食の間
Breakfast Parlour (ポストカードより)

何故ここにこんなドームが・・?
どうやってこんな小さな空間に・・?と不思議でなりませんでした

ここには絵画とレリーフ、重厚なチェストや書棚が飾られ、
ミセス・ソーンのとても可愛がっていた子犬“ファニー”のポートレートも見られます


“Favourite dog”
ソーン夫妻にとても可愛がられたFanny
James・Ward作のポートレート
 (ポストカードより)

そして、最初の図書館とダイニングルームをまっすぐに進むと
この館の見所の一つでもある
『Picture Room』へと進みます・・が、
その間に廊下とも見える狭い空間は実は立派な部屋でした
『The Study & Dressing Room』


the study&dressing room
狭い空間のThe Study & Dressing Room

右手側にはエジプト・ギリシャ・ローマの建築・装飾・家具などのレリーフが
ところ狭しと天井までの棚にぎっしりと置かれ、吊るされています

反対側の左手側は大きな窓になっていますが、
そこにちょこんと一つの机


The Study room&Dressing room
The study&Dressing room
1822年Joseph Gandy画 ガイドブックより


確かに机に向かっているのは窓側なので採光は抜群!
振り返れば蒐集した美しいレリーフたち

こんな勉強部屋も楽しいかも!と思わず思いました(^.^)

そして、この博物館の目玉の一つでもある
『The Picture Room』はその先の小さな小部屋
ジョン・ソーンの絵画コレクションは16世紀から19世紀までの
油彩と水彩、素描になります

その中でも択一しているのが、
英国を代表する16世紀の当時の世相を痛烈に風刺した画家
ウィリアム・ホガースの連作

1733年の“放蕩者のなりゆき”の8連作は
英国では知らないものはいないとさえ、言われる作品で
現在はその連作からインスプレーションを得、
オペラやバレエの舞台の演目としても残されている作品です


The Picture Room
ホガースの8連作が並ぶThe Picture Room ポストカードより

天井高い自然光を取り入れた
明るい絵画の部屋

貴重なホガースの8連作が並んでいます


ホガースの“放蕩者のなりゆき”の第2図
ウィリアム・ホガースの“放蕩者のなりゆき”
8連作の中の第2図 ガイドブックより


更にホガース作品としては
“選挙”という題材も同じように時代の風刺画で
実際に行われた選挙の腐敗を痛烈に批判したもの

この当時の上流階級から労働者階級まであらゆる人々の生活を
辛辣さを込めて、忠実に残したこの画家は
余りの人気故に海賊版まで出てきたことにより、
国に働きかけ芸術家達を守る“ホガース法”は
英国初の著作権保護法となりました


それらのホガースだけでなく
友人でもあった英国誇る印象画の第一人者とも言える
あのJ・M・W・ターナーとも親交が深く
彼の絵画をアトリエへ出向き、
ソーン夫人がその中から2点の作品を購入したことから
その後は家族ぐるみでお付き合いが始まったようです

この小部屋には入場制限があり、
しばしば30分後に・・・と言うくらい人気の高い見所なので
時間に余裕を持っていらっしゃることをお薦めします








3つの家を大改造して造られたこの家は
螺旋階段に造られた階上へ進むと(日本で言う2階)
窓が大きく作られ、壁の色も明るい卵色に彩られた
『South Drawing Room』へと見学できます


South Drawing Room

South Drawing Room ポストカードより

広々としたこの客間には暖炉を挟んで
右が51歳のジョン・ソーン自身、左は2人の息子達の肖像画

ソーン家の2人の息子
ソーン家の2人の息子 左がジョージ、右がジョンJr.
ガイドブックより

そして、反対側にはミセス・ソーンの鉛筆画が飾られています


ミセス・ソーンの鉛筆画

ミセス・ソーンの鉛筆画 ガイドブックより

この女性がご主人に任されて
しばしばクリスティーズのオークションへと送りこまれ、
前出のホガースの8連作を当時のお金570ギニーで落札したことも
何故か微笑ましく思えるエピソードでした



そして、この博物館のもう一つの見所は何と言っても
不思議空間
『The Colonnade & Dome』


The Colonnade&Dome
『The Colonnade & Dome』 ガイドブックより

天井のドームから入る自然な光とこの凝縮された空間に詰め込まれた
ありとあらゆる展示物は
石膏、古代彫刻、古代遺跡、またこのドームの1階には
エジプト国外では最高とされる質を誇る
セティ1世の石棺

これは紀元前1370年、古代エジプトのもので
お棺の周りには細かいレリーフが前面に浮き彫りにされて、
とても良い状態に保存されています

この2階部分には古代彫刻のほか、
ポンペイ出土品のブロンズ像、
1階から昇る螺旋階段から
展示室以外の部屋の小窓からちょっぴり見える骸骨標本、
イタリア画家のカナレットのベネツィア風景画など・・・

カナレットの『ヴェニス』
18世紀のイタリアで風景画家としても第一人者 ガイドブックより
本名はジョバンニ・アントニオ・カナル
1746年から約10年ロンドンに滞在しています



とにかく『お宝』ぎっしり詰め込みました!

このミュージアムは、
気が付くと同じ場所をぐるぐると巡っていたりするのですが、
それは何故か・・?というと
その度に新しい様々な絵画、彫刻、骨董品や考古学的破片、美術品、
良く見るとテラコッタ製の天才画家ヴァン・ダイク像や
作曲家のヘンデルなどの胸像があったりするのです


大英博物館を一日で巡ることは到底無理ですが、
比べられる許容量は違っても
『英国人の蒐集癖』をちょっとでも垣間見るチャンスと
美術館貯蔵並みの絵画を観に行くつもりで
出かけてみてはいかがでしょう





そして、館内を堪能したあとは
目の前に広がる緑の公園
リンカーンズ・イン・フィールドを立ち寄ると
何故かその静けさと穏やかさが目にとても嬉しくなりました


リンカーンズ・イン・フィールド
緑豊かなリンカーンズ・イン・フィールド
この小さな公園はニューヨークのセントラル・パーク建設のヒントになったそうです













また、ご意見、ご感想、お問い合わせもお待ちしております





うさぎの国を旅する


Artしましょう Act.1

Artしましょう Act.2

Artしましょう Act.3

Artしましょう Act.4

Artしましょう Act.5


博物館へ行こう Act.2


博物館へ行こう Act.3


Top New ページのTOPへ おまけ