Sportsの窓

EPISODE 8


〜 2008年度 六カ国対抗戦 〜

“ワールドカップ後 初めての北半球決戦”

 【3】


2008年sixnations



すでにご承知のとおりイングランドチームのラグビー首脳陣は大荒れにもめています

先月この大会の終了後この大会の結果において

様々な思惑や意見の中
イングランドのブライアン・アシュトンヘッドコーチも
先週4月15日にいきなり解任され、
2003年イングランドがWCで優勝した時の主将マーティン・ジョンソンが
イングランドのチーム・マネージャーに任命され・・
正に6月のニュージーランド決戦に備えて
新たなる建て直しにかかっています



イングランド元主将マーティン・ジョンソン
4月18日イングランドのチーム・マネージャーに任命された
元イングランド主将 マーティン・ジョンソン BBCニュースより



それはこの大会において
ジョニの不振などや代表メンバーの起用にあり方など
様々な意見がアシュトンヘッド・コーチに浴びせられ
この大会の最終戦において
初めてジョニをスタメンからはずし、
若いシプリアーニを起用したことなども
多いに影響があったこととされています


ジョニとシピリアーニ
ジョニとシピリアーニ BBCニュースより


そんな“春の大嵐”状態のイングランド
ラグビーニュースは現在その話題一色に染まり
あの2003年WC優勝メンバーが一斉に今回のジョンソン人事に、
また現在のジョニの行方についても
語り始めています
“アシュトンコーチの良いにつけ、悪いにつけ・・”


それでも、私は一つの試合として
この最終節第5節は何度見ても
どの試合もラグビー試合としてわくわくしてしまう80分に
“やっぱりこの大会は毎冬の楽しみ


そんな大会が名残惜しく
最後の最後まで楽しめた今年の大会の最終節を
どうぞ、お付き合いのほど・・・・お願い致します











【第5節】


3月15日
14:00


イタリア 対 スコットランド
23 - 20
(Half Time 10 - 17)


<Stadio Flaminio>


執念の逆転ドロップゴール
後半終了間際 執念の逆転ドロップゴール イタリア15番 マルカート
公式サイトより



以前イタリアの首相 ロマーノ・プローディさんが
フットボールの試合で国歌を歌うことはないが
ラグビーの試合でこんなに国歌を歌う国民がいることに感動した・・という
それからか・・度々観戦しているという
最終戦はここ地元ローマでのスタジアムになりました

他の5カ国のスタジアムに比べると
のどかなこじんまりとしたフラミリオですが、
私達の秩父の宮のように観客と選手がとても近くて親近感のあるスタジアムです

すでに会場は陽気なイタリアっ子で超満員
試合前の国歌斉唱ではそのプローディさんも更に驚くくらいの
スタジアム中が皆夢中になっての大合唱でした

しかし、この試合の両者は残念ながら
今大会すでに上位は望めない最終戦
最下位争いという1戦になりました

どちらもその順位にはなりたくない・・
そんな思いが両国からひしひしと感じられます

また、昨年はスコットランドは対するイタリアに
地元マレーフィールドで
1点差で逃げ切られた相手でもあり
そのため最下位になってしまった・・という・・・
因縁めいた最終戦でもあります

今年は反対にイタリアが地元の声援を直に受けることになりました
試合前からローマっ子の熱気と歓声が
グラウンドに立つ“16人目”のように選手たちを後押しし
ヘッドコーチのニック・マレットさんも是非この声援を受けて
最終戦を戦いたい・・とのコメント
願ったりのシチュエーションが揃いました

そんな試合開始からわずか12分
前回フォワードでイングランドを下したスコットランドのフォワード陣を
スクラムからの反則で認定トライ
スタジアム中が怒涛の如く揺れ動いたのは言うまでもありません

相手のフォワードから反則を誘っての、
打ち負かし、フォワード全員が力でもぎ取った貴重な先制トライです

技術的にはパスがファンブルしたり
ノックオンしたり・・とボールさばきには
“あれっ!?”と思うことはあっても
スタジアムの声援と
彼等の倒れても、倒されても
その度起き上がり、前に進もうとする姿には
他の5カ国には感じない何かが目に残ります

イタリアチームは1試合毎に確実に強くなってきています

WCでは僅かにスコットランドに敗れ、
決勝トーナメントへは進めませんでしたが
彼等1人1人の技術が1歩づつこのまま進んでいけば・・・
今年よりは来年、と
まるで作られたドラマのような
ノーサンド終了間際のマルカートの逆転ドロップ・ゴールは
決して忘れることはできないでしょう・・・

最下位にはなりましたが、
(得失点差で)
試合終了後この日勝つことができた
イタリアチームの面々はまるで優勝したような興奮で
選手達を迎えるスタジアム中のイタリアファンの喜びと
彼等の清々しい顔がとても印象的でした

試合終了後


この試合終了後の様子で
すでにこのチームの来年がとても楽しみになりました





3月15日
15:00


イングランド 対 アイルランド
33 - 10
(Half Time 13 - 10)


<Twickenham>


イングランドの13番ジェイミー・ヌーン
この日の“マン・オブ・ザ・マッチ”の13番
いぶし銀のような職人芸 ジェイミー・ヌーン



この日の試合のスタートを忘れることはできないでしょう

怪我をしているでもなく
ジョニがスタメンを降ろされて21番の背番号をしょった日

若干20歳の新鋭ダニー・シプリアーニに10番を背負われ
控えの廊下で笑顔だったジョニを・・・

対するアイルランドは前戦で怪我をした主将オドリスコルは欠場
初めてのゲームキャプテンになった10番オガーラの緊張した顔も
その日の試合結果をすでに物語っているようにも感じました
(とにかくオガーラは顔に出すぎーーーと常々思います
彼のコンディション状態でこのチームの勝敗に多いに影響するし、
オドの居ない試合には尚更〜と・・・)

この日のイングランドスタメン・メンバーは2003年のWC優勝した当時
その大会時に出場していたの主将のヴィッカリーのみという
若手中心のチーム編成
ずいぶん思い切ったことを・・・と・・
いつの時も楽しみな若手チームではあるけれど
やっぱり大丈夫かい?!最終戦だよ、と
ジョニ贔屓の私はちょっと眉が下がってしまったのは云うまでもありません
(何しろ中心のシプリアーニはまだ20歳
このポジションデビューに幾多の選手がいつもの力を発揮できず
スタジアム中をため息の嵐にさせられたことか・・・

しかも、この対戦は117戦目に当たり
過去イングランドは69勝43負4引き分け
その内2003年のグランドスラムからはずっとアイルランドの快勝で
今年は大会最終戦ということもあり
決して落とせないイングランドにとっては!の、
この先発メンバー
誰もが不安と期待とを半々、という気持ちは隠せない・・

しかし、相手側アイルランドのオサリヴァンヘッド・コーチの面持ちも
何故か落ちつかなげで、
オガーラ以上に切羽詰まった様子が何とはなしに印象的であったことも
今を思えば頭に残る・・

先ずは黒いヘッドギアのイングランド・シピリアーニのキックから

立ち上がり勢いのあるアイルランドは
開始早々5分も経たないうちに
11番カーニーの先制トライ
オガーラもきっちりと決めて先ずはアイルランド先行
10-0で進みます

しかし、イングランドのお家芸
フォワード陣も負けておらずホールドしたボールは
きっちりと若いハーフ団からバックスへパスをつなぎ
怪我で一時退場していた11番サッキーに代わり入っていた
マシュー・テイトが見事はサイド攻撃で
前半20分でしっかりと同点に早くも追いつきます

そして、山場は後半52分にお待たせしました!


12番フロッドと交代したジョニ
チームメイト トミー・フロッドと交代するジョニ
IRB公式サイトより


12番クラブチームメイトでもあるフロッド坊やから交代した
センターに入るジョニに
何故かこの試合はとてもなく「豪華版や〜」と感じたのは
それまでに落ち着きミスなく
どうどうとした20歳の新しいハーフ10番に
実は頼もしいものを感じ、
この先、仮にジョニが怪我をしても
シプリアーニなら落ち着いてイングランド戦を観ていられるかも・・と
思い始めたところにありました



10番フライハーフのシピリアーニ
どうどうポジションをこなす
10番フライハーフのシピリアーニ
IRB公式サイトより


パスもキックもゴールキックもほぼ完璧な状態で

タンタンとこなすこの新しい10番は
(ジョニでさえ10年近く前のデビュー戦の苦い試合経験があるというのに)
日常の試合と同じように、この大事な1戦に
先輩の足を引張るどころか
役割をこなしていく姿に共感を持ったのは
私だけでないはず・・・
そして、後から入ってきたジョニのアドバイスも素直に従っている様子?
ジョニとシピリアーニのツーショットは見ていて頼もしい限りです
(それでも、真の10番は・・と問われたら迷うことなくジョニ!
“輝く選手”は“うまい選手”が束になっても違います
それは個人的には日本でなら引退して長い期間があっても・・松尾選手、
海外版ではジョニ、オドが私にとってはあたります)

また、この試合で“マン・オブ・ザ・マッチ”に輝いた
ジェイミー・ヌーンの活躍が目立ちました

アタック、ディフェンス、タックルと・・
「13番」という難しいポジションを見事にこなし
ゲームに勢いをつけて
後半69分彼のトライには
背走外側ジョニ、内側にヴァイニコロを従えながらも
自ら飛び込んだトライには今後のイングランド・バックス
ロビンソンなきあとであっても
新しい光をちょっぴり与えてくれたようにも思えました

私がもし今回大会でたった一つの
ベストマッチは?と問われたら
この試合が・・と
ちょっぴり考えて・・・そう答えるでしょう





3月15日
17:00


ウェールズ 対 おフランス
29 - 12
(Half Time 9 - 6)


<Millennium Stadium>


2つのトライを上げたシェーン・ウィリアムス
この日も2つのトライを上げたシェーン・ウィリアムス
公式サイトより




もうすでに試合前から久しぶりのグランドスラムを観ようと
スタジアムに詰めかけたこの日のレッドドラゴンファンの
試合前の盛り上がりは想像に難くない

そのくらい昨年のWCの不完全燃焼からこの日を待っていた!
そんな気持ちが試合前からすでに響き渡る
“Land of my father”の大合唱
今日を勝てば2005年以来のグランドスラムが掛かっています

対するおフランスは
昨年のWC決勝トーナメントではこのスタジアムで宿敵オールブラックスを破った
縁起の良いスタジアム
何とか勝ってこの大会も良い成績で終わりたい

先週トリプルクラウンを手にしたウェールズチームは
この日50キャップ目の5番イアン・ゴフを先頭に
そのトリプルクラウン杯を手に持つ昨年急逝した往年の名選手のお嬢さんの後に
耳を劈く歓声のスタジアムに登場しました

本日のウェールズの先発ハーフ団は
ベテランコンビのピール&ステファン・ジョーンズ組ではなく
敢えて上り調子のフィリップス&フック組

先ずはそのフックの右足から試合は始まりました

元々フォワードの攻めが短く、早く、テンポ良く進めば
素早いボール回しからバックスへ渡り、
ちょろQのシェーン・ウィリアムスへボールが進んで
トライ!というのが今年のウェールズの勝ちパターン

ところが出足はおフランスも前へ前へと進みますが、
中々思うように自分達のペースに乗り切れません

それはスタジアム中7万人観衆を味方につけ、
自分達のラグビーをしっかりと守りも攻撃もできる
今大会のウェールズは更にこの試合ではリズムをつけていきます

前半終了間際に
ウェールズ12番ヘンソンの反則10分間退場により
3点差に追いついたおフランスのペナルチィーキックで
後半に望みをつないだおフランスは
47分に更にペナルティーキックで追いつきましたが、
その後交代したベテラン、フライ・ハーフ
ステファン・ジョーンズに目が慣れる間もなく
ウェールズ国内記録である41個目のトライを上げた
シェーン・ウィリムスの飛び込みに
またまた点差をつけられます

スタンドで観戦する
“プリンス・オブ・ウェールズ”のウィリアム王子も
真剣な眼差しでフィールドを見つめるその先には
170cmにも満たない
(公式身長は170cmとされているが、本当は169cmとも言われている)
ちょろQシェーン・ウィリアムスの大きな記録に
改めてラグビーというスポーツの面白さに
またまたスタジアム通いが始まってしまうのではないでしょうか・・

その後は交代したおフランスのベテラン、
スクラム・ハーフ、ヤシュビリのペナルチィー・キック1つの得点で続かず
更に後半終了間際にウェールズ7番マーティン・ウィリアムスに
ダメ押しともいえるトライを奪われ
今年はレッド・ドラゴン旋風でこの大会は幕を閉じました



優勝したウェールズ
2008年度の六カ国対抗戦で見事に全勝優勝
グランドスラムを手にしたウェールズ










【おまけ】


この大会直後
最もびっくりしたのは
長年に渡って指揮をしてきたアイルランドの名将・ヘッドコーチであった
エディ・オサリバンさんの退陣でした


アイルランド元ヘッド・コーチ オサリバン
最も長くアイルランドを指揮してきた
名将エディ・オサリバン



2001年からアイルランドを率いてきた
オサリバンコーチの戦績は
78試合の内勝利は50試合敗戦は28試合という見事なもの

このアイルランド代表を率いる前は21歳以下のアイルランド代表コーチ、
その前は1999年のWC時には
アメリカ代表のヘッド・コーチという経歴の持ち主

彼がアイルランド代表を引き受けてから
昇り調子になったチームは
彼の功績によるもの・・と


 
2002年地元ダブリンにてランズダウンずロードで
初めてオーストラリア・ワラビーズを破った時

BBCニュースより


この数年六カ国対抗戦での戦績では優勝こそ取り逃がしてはきたけれど
在籍中約6年以上の間この大会で3回のトリプルクラウンは
アイルランドにとっても
輝かしい戦績を残したことも記憶に新しい



2004年六カ国対抗戦トリプルクラウン
2004年の六カ国対抗戦
トリプルクラウン杯と主将オドと・・BBCニュースより



そして、昨年のWC後に新たな契約で次回のWC2011年までの契約をした、とのことは
たった4ヶ月前の出来事でした


2008年トゥッケナムで敗れた直後


しかし、昨年のWCではアイルランド最強のメンバーと言われながら、
決勝トーナメントに残れなかったこと
そして、今回の六カ国対抗戦において
最終的には4位で終わったこと・・・などの責任をとって
潔く辞任した、ということなのでしょう

しかし、まだ49歳のこの名将の今後の行方も気になるが、
果たして次ぎのアイルランド代表ヘッド・コーチには
一体誰が後任になるのでしょう・・・

それでも、個人的にはこの優しい風貌のオサリバンヘッドコーチは
見ていてもいつも選手と共に歩んできた、という印象を最も強く感じたコーチでした
とても残念に思えます



今はなき地元ランズダウンズロードにて
2004年イングランドを破っての六カ国対抗戦
トリプルクラウンを手にした瞬間
主将のオドと BBCニュースにて




【そして・・ひつこくまだおまけ】


すでに来年2009年度の対抗戦のスケジュールが発表になりました

来年こそは早めに仕事に見切りをつけて
観戦しに行きたいと企み始めています

曜日 開始時間 ホーム国 アウェイ国 スタジアム
2月7日 15:00 イングランド イタリア トゥッケナム
17:00 アイルランド おフランス クロークパーク
2月8日 15:00 スコットランド ウェールズ マレーフィールド
2月14日 16:00 おフランス スコットランド スタッド デ フランス
17:30 ウエールズ イングランド ミレニアム スタジアム
2月15日 14:30 イタリア アイルランド スタディオ フラミリオ
2月27日 21:00 おフランス ウェールズ スタッド デ フランス
2月28日 15:00 スコットランド イタリア マレーフィールド
17:30 アイルランド イングランド クロークパーク
3月14日 16:00 イタリア ウェールズ スタディオ フラミリオ
17:00 スコットランド アイルランド マレーフィールド
3月15日 15:00 イングランド おフランス トゥッケナム
3月21日 14:15 イタリア おフランス スタディオ フラミリオ
15:30 イングランド スコットランド トゥッケナム
17:30 ウェールズ アイルランド ミレニアム スタジアム

これが私の働く意欲の1番の力です
何よりも次ぎの冬が待ち遠しーーーっっ!!

すでに来年へのスタートを切りました

次ぎはどの国がどんなメンバーで
どのようなに面白い試合を魅せてくれるでしょう・・・









長きに渡りこのシリーズにお付き合いいただき、
誠にありがとうございました

この今年の六カ国対抗戦のページは私にとっては
絶対に終わらせたいページでもありました
旅サイトでありながら
数週間に渡りラグビーページにお付き合いいただきましたこと・・
お詫びと共に最後まで読んでくださったことに感謝いたします


どうぞ、ラグビー観戦にご興味がおありになる皆様からのご意見・ご質問をお待ちしております





注)これはあくまでも私個人の感想になります
皆様それぞれのご感想やご意見をお持ちでいらっしゃることと思います
皆様のご意見などお待ちしています








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 ・2003年ワールド・カップ 前哨戦(こちらから2003年第5回大会ページへお進み下さい)
 ・ワールドカップその後 EPISODE 1
 ・2004年シーズン後 EPISODE 2
 ・2005年六カ国対抗戦  EPISODE3 【1】〜【3】はこちらからお進み下さい
 ・トゥッケナムスタジアムへの道 EPISODE4 【その1】 【2】〜【3】はこちらからお進み下さい
 ・2006年六カ国対抗戦 民族の戦い EPISODE5【1】  【2】〜【3】はこちらからお進み下さい
 ・プレミアシップ観戦記 その1 2007年
 ・プレミアシップ観戦記 その2 2007年
 ・2007年六カ国対抗戦 WC開催年 EPISODE7【1 【2】はこちらからお進み下さい
 ・2007年 The World Cup in France EPISODE6 Road of the World cup 2007 【1】
 ・2007年 The World Cup in France EPISODE6  Road of the World cup 2007 【2】
 ・2008年 六カ国対抗戦 WC初めての北半球決戦【1】 EPISODE【8】
 ・2008年 六カ国対抗戦 WC初めての北半球決戦【2】 EPISODE【8】