今月のお薦め本 



〜2007年 5・6月〜

                                                         
1年で1番英国が美しいと思うのは5・6月だと思っています

それは98年に3シーズン旅した英国で実感したことでした

お世話になったシドマスのターナー家を旅するために出発したときは
南西部でも珍しいイースター後に雪が降った年でしたから
当然初夏が遅いかもね〜と言われてました

確かに4月というのに雨が多く・・・
この先どうしよう・・と思ったことも何度かあった矢先
5月のバンクホリデーを機に一気に気温は上がり
陽が長くなり
木々は新緑を増し
本当に毎朝目を瞠るような牧草の青さ『草の海』を
わくわくする気持ちで歩き回ったのもこの5月でした

その後の6月にはちょっぴり温度も下がり
過ごしやすい日々が続き
英国では夏のフルーツ
“ベリー類”が徐々に出回り始める頃です

学生さんも、働く人々も
休暇にはまだ早い時期ではありますが・・・
英国での旅は私の中ではダントツのお薦めの月

そうは言ってもなかなか出発できないのも事実ですが・・・
チャンスのある皆様へは絶対のお薦め時期

私もいつかは訪れてみたいこの時期を
今は本でまぎらわしています

今月もそんな本たちの中からお薦めの1冊を・・
皆様にも同じように感じていただければ幸いです









イラクサの小道の向こう

〜 英国、花とくらす小さな村 〜

イラクサの小道の向こう


並木 容子 著 アノニマ・スタジオ ¥1,600+税  2007年2月初版






とてもシンプルな表紙のこの1冊は
フラワー・アレンジメントである著者がおそらくは初夏に訪れた
コッツウォルズの小さな村に休暇のために滞在した期間に
そこで感じたことを綴ったエッセイです


著者の並木 容子さんは東京生まれ
吉祥寺でフラワーショップ&スクール『ジェンテ』を主宰なさっていらっしゃる
フローリストさんです

すでに何冊かの
英国での花に関する旅についての本を著作なさっていらっしゃいます

その御本も実は持参しているのですが
今回彼女のこの1冊をご紹介いたします


   


彼女はロンドン・パディントン駅から列車で1時間
コッツウォルズの鉄道玄関口であるモートンインマーシュ駅から
タクシーで向かった先は『ブロックリー』という小さな村でした

その小さな村での滞在場所に選んだのが
「ミル・ディーン・ガーデン」というお庭自慢のB&Bでした

この「ミル・ディーン・ガーデン」は
この本には詳しくはご紹介されてはいませんが
コッツウォルズでのご滞在先としては
よくお薦めされているB&Bの一つでもあります

  

11世紀に建てられた粉引きの家でもある
大きな水辺のコテージ

私たちの国では1つのファミリーが住むコテージとしては
考えられないような大きなガーデンを所有するお宅でもあります

庭の中には小川が流れ、
大きな池もあり、小道まで散策できるほどの規模をもちます

しかし、このお庭が現在の所有者でもあるウェンディ・デア夫人が
移り住んだ1965年当初からあるものではなく、
現在は宿泊客以外でもお庭を見せてほしいというゲストが絶えないために
曜日と時間限定で公開している・・という
ガーデンに造りかえたのは
このデア夫人の力によるものでした

長い年月をかけて
庭の斜面を削ってテラスを造り、
スロープや段差を生かしたデザインの庭を生み出しました

ガーデンの中にはハーブ・ガーデン、ワイルド・ガーデン、
ローズ・ウォークの先には芝生が広がり
その先はフルーツ・ガーデン、ボタジェと続きます

ゲストルームは全部で3ルームあり、
全ての部屋からこの素晴しい庭が見える・・と言います

  

フラワー・アレンジメントを手がけ、
フローリストである著者の目を通してみた
この庭の素晴しいコテージでの滞在期間に
デア夫人のお庭や
ふとした彼女のホストレディーとしての心遣いなどが綴られた記録には
本当に癒されるような気持ちが湧き上がってくるのが不思議です

最初はこのように「ミル・ディーン・ガーデン」での
滞在から始まりますが、
読み進めていくうちに
このコテージを拠点にコッツウォルズで過ごした日々の
新しい発見やその地に住む人々の生活や交流が
並木さん風に私たちへ伝えてくれる文章に
最後までほのぼのとするような気持ちを感じさせてくれる
この1冊でした

改めて、今更ながら本国でも絶大な人気のある
ここ『コッツウォルズ』での日々に
ほんの少しでも垣間見ることができる旅をしたくなります

著者は多くの私たちのように
1回の英国旅行で1泊、2泊しかしないこの地での旅ではなく
ここだけに滞在して
ゆっくり、ゆっくりと徐々に生活する人々に接し、
本当の意味での『コッツウォルズ』の良さを感じることができ・・

ゲストを暖かく迎えてくれるデア夫人、
この地に家族で戻り、養蜂を楽しむジェレミー、
村の社交場1件しかないパブ「クラウン」、
リンゴ園を代々続け
ご自慢の農場を案内してくれたマーティンとディビット、
村にもう一つ若い夫婦が営む新しいB&Bの、
奥様がこの地で取れる食材で心こめて作る食事に出てきたのが
この本のタイトルにもある
「イラクサ」の・・実はスープ

そして、車を持たない著者に
日々気持ちよくこの地を期待以上に見せてくれた
タクシーのドライバーのジョンとミック

彼女の旅はこうした人々との出会いが
コッツウォルズという土地とリンクしていて
最後はドライバーのジョンとミックとの別れには
私自身ターナー家でお世話になった
ロイとジェニーとの別れにも重なりました


  


旅する人々の旅のスタイルは本当に様々だな〜と改めて感じた
この1冊

そして、御本の随所に現れる出会った心休まる風景と
素敵な笑顔の人々は
本当に目にして暖かい気持ちになれます
だから、この本の表紙はこんな風にシンプルでいいのだ・・とも

コッツウォルズという地での旅は
本来はこうしたスタイルが1番合っているのではないだろうか・・・と、
感じたことと共に、
実はこの場所だけでなく
英国という国のどんな場所に滞在しても
“デア夫人”がいて、
パブ「クラウン」があって、
“ドライバーのジョンとミック”がいる・・

だから、この国へ何度も足を運んでしまう自分がいるのだな〜と
つくづく思いました



  



イラクサのスープってどんなスープなんでしょう・・・?







2度目からのロンドン・ガイド

〜 こんなロンドン知っていましたか? 〜


2度目からのロンドン・ガイド


石井 理恵子+横山 明美+キアラン・ミーク 著 
河出書房新社 ¥1,600+税  2007年5月初版







こちらもすでに何冊もご紹介している
石井理恵子さんの最新刊

今回は横山さん、ミークさんとの3名のお名前での著作ですが
内容はいつもの御本と同じように
隅から隅までぎっしりと様々なコラムを含む
最新の情報が満載です

そして、なんて可愛らしい装丁でしょう!
私はこの帯も表表紙のデザインも
とっても今の季節にぴったり!のさわやか感に
思わずほおずりしたくなるような・・・
(そうすることにより逆に清潔感溢れるこの色合いに
濁りがでそうだけれど・・・)
このテキスタイルデザイン画は
ロンドンでも日本でも大人気のCath・Kidstonのもの
言われてみると赤色が彼女特有の色ですね〜
きっと石井さんたちが楽しんでこの1冊を作り上げたに違いないっ!と
勝手に私自身想像できて
開いてみる前からうきうきするような最新刊です


 



刻一刻と観光へ出かける相手先情報の変化に
お国によってはそのスピードが違い
特にヨーロッパにおいては
比較的のんびりとした変化なので長くそのガイドブックを楽しめる・・・と
私自身数年前まで思っていました


しかし、昨今は欧州統合に伴い
ユーロがすでに一般化されてから
当然のように私たちはそれを受け入れ
そうなると大陸の国は一様に早い変化がもたらされ
私たち旅行業界にも
大きなその波で日々走り回っている現状です


その中でも英国という国は
一説によると
硬貨から我々の女王の顔がなくなってたまるものか!という声も理由の一つ
国民投票により
欧州統合には参加しない、という結果は
何世紀続いてきた、
一種『大英帝国』という名の元にも
通じるような頑固さを感じます

近代日本を築いていく上で
私たちの国のお手本ともなったこの大英帝国は
訪れる度私たちに安心感と憧れを抱かせてくれる国でもあります

自然と初めて滞在してみると
多くの旅人が“もう1度”と思わずにはいられない・・・

そして、個人で旅をすると
思っていた以上にリラックスできる英国に
2度目以降は当然前回訪れることが出来なかった場所や体験、
更に頭でしか想像できず
諦めていた好奇心を満足させるためにも
様々なガイドを探して行くのが当然とも言える結果だと思います

そして、そんな英国への旅には
日本から出発する限り
先ずはロンドンを経由しないで旅することはありえません

今回の石井さんの新しい御本は
そんな旅する人を満足させてくれる
2度目以降からの
更に深いゾーンへの探求心を十二分に満足させてくれる
「今までになかったガイドブック」です

サブタイトルとも言える
帯の走る少年の吹き出し
〜こんなロンドン、知っていましたか?〜

もちろん、当初からこんな場所へ行ってみたかった、
経験してみたかった、
中々資料が見つからなかった・・という方々へも
ちょっとディープな参考ガイドにあること・・間違いありません


   



内容は07年2月現在という
とても新しい情報

そして、「ロンドン歩きの必需品」から始まっていますので
当然“2度目”でなくとも必要項目です

ご承知のとおり現在うなぎ上りな物価の上昇は
大都市ロンドンでは避けて通れない試練です
ですから、当然このような案内を見逃すわけにはいきません

特に『オイスターカード』
以前は1日のトラベルカード持参なら安いーーと思っていましたが、
現在はそれも使いようによってであることなど、
『現金』という案内では
持たずにはすまないお金の有利な換算場所、
『もしも地下鉄が止まったら』では
実際に遭遇率が結構高いこのトラブルへの対処、
(特に言葉が堪能ではない私・・・
うんうんと頷いて石井さんの案内通りだわ・・と)
『ただでもらえる便利なもの』は
私もロンドンでは常に手にいれて
ボロボロになるまでお世話になっているものばかり・・・と・・・

ちょっっぴり難しく思えるけれど
実際はこのようにきちんと簡単に案内してくれているので
現地で試してみると実はまったく難しくもなんともない
とても有効に利用できるものばかりです




そして、これからの季節に旅する方々へお薦めなのは
巻頭にご紹介している
『ガーデンショップ』

私自身は日常うちのお庭の世話をすることはほとんどできないけれど
初夏から初秋にかけては
やっぱりガーデン関係に癒されます

それは、花や植物に関しての雑貨を見ることや
木々や花に囲まれてのティールームでぼーーとしたり、
緑の空間をぶらぶらすること

広いガーデンを見て回るのと同じくらい
頭も体もぽか〜〜んとしてしまいます

そして、そんなショップ内で出逢える猫たちがいるなんて・・
そういう子たちは正しく天使にも匹敵するくらい
大都会ロンドンではめったにお目にかかれるものではありません

石井さんはそんな猫好き私たちにも
心憎いくらいに“この天使たち”を見つけてくれます






更に内容を進んでいくと
「ひみつの花園」「英国のスポーツ」
「ロンドンの老舗」「アフタヌーンティー」
「パブリックスクール」「ロンドン日帰り旅行」
「個性派ミュージアム」「伝統行事」
「エンタティメント」「ひとりでごはん」
「スピリチュアル体験」「パブ探検」「BBC見学」


生野菜がランチに取れたら最高!


そして、合い間合い間に見逃せないCOLUMNがたっくさん!
“英国人の生活にふれるB&B”
(こちらで幣サイトのご紹介をしてくださっています)
“スマート・カジュアル”
(このご質問は本当に会社・サイト問わず多いです
ドレスコードは知っておいた方がより楽しめる、と思います)
“マーケットで1週間”
“お手頃なスーパー土産”
(帰国後ほとんど自分の手元に残してしまうくらいほしいもんだらけ
などなど・・・と
どのページを開いても見逃すわけにいかない情報ばかりです

そして、それぞれのタイトルを彩る
マツモトさんの銅版画も
前回『A to Z』同様
この街での一つ一つの見所を
1枚で表現している絵は見ていて愉しくなります


これからの季節のロンドン街歩きには
この1冊で充分回りきれないほどの紹介があります
観光からショッピング、お食事と・・・

9月の旅には絶対にバックに忍ばせて向かうこと必須です


さあ!ロンドンを歩くぞーーーっっ

てってけてーーっっ






カフェのケーキセット
ロンドンにはイタリアンカフェもたくさん






こちらのページに関しては、全て私の独断になります
お読みになっていただいた後のご感想は、
皆様それぞれに感じることに相違があるかと思いますが
少しでもお楽しみいただけたら幸いです
  





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