今月のお薦め本 



〜2004年 11月〜

                                                         
怒涛の先月一ヶ月のちょっぴり余波が残りながらも、
日々が今年1年の締めくくりに向かって穏やかにこの月が過ごせれば
良いな〜・・なんて思います

世界中で様々な出来事が起こっています

直接関係ない、と思いたくはありませんが・・・
今月は私、個人的に冬をゆっくりと感じながら猫の相棒リキを傍らにお気に入りの本で旅がしよう・・と

なーーーんて日常は考えるに恐ろしい『年末』の皆様のご出発便・ご帰国便のフライト調整に
実はおびえているのです


さて、今回も様々なジャンルから英国物・・・をご紹介していきます

そして、来るべき時がきたら、すぐに飛び立てるように・・・

例え、今すぐ旅発てなくとも
読んでおいて損はありません・・・と思います!!




ケルトの白い馬


ローズマリー・サトクリフ 著  ほるぷ出版  定価¥1,400+税  2000年12月第一版




ケルトの白い馬 おなじみのイギリス児童文学者であり、
小説家でもあるサトクリフ女史の物語

英国を旅をしていると色鮮やかな緑の丘陵に白いチョークで描かれた
様々な意味を持つ巨大な『絵』に出会います
しかもモチーフが「馬」というのも一つ二つではありません

この『ケルトの白い馬』はオックスフォードの街から約30km離れた
バークシャー州のアフィントンという小さな村の緑の丘に描かれています
くっきりと白いチョークで描かれたようなこの馬にまつわる
古い古い部族のお話しを
まるでサトクリフは実際にその場に常に居たように
見事にこの馬の発生を物語っています

私はこの『白い馬』を知ったのは
短いながらも時代を一世風靡するテレビ番組『世界の車窓』から
たった5分にも満たないその番組の中でした
しかし、その番組で見た馬は立っているだけのもの
緑のキャンバスに「馬」を描きました・・というものでした
それでも、列車の車窓から見られる巨大な白い馬はとても印象的で
絶対に本物をこの眼で見る!と硬く心に誓ったはず・・・・
と、言うのは未だにその硬いはずの決意が実現されていないまま
時に流されて暫くは記憶の隅っこに追いやられていたのです・・

今回何故のこの本を手に取ったか?というと
先月サイトからのお問い合わせで小学生の化石好きの息子さんの為に
ご家族でアンモナイトの化石を見に
英国へいらっしゃるというお便りをいただいたことがきっかけでした
この馬は『化石』ではないけれど
急に何年振りかでこの白い石灰石で描かれた馬を突如思い出したのです 

そして、早速図書館で1度は手に取ったこの一冊
正しく英国の地のグリーンに白い馬
躍動感溢れるこの白い馬は“世界の車窓”で見た
憶えのあるものではありませんでしたが・・・
逆に力強い線の馬は写真なのにまるで天駆ける天馬のようで
私の眼から離せなくなりました

この物語の前にサトクリフが“はじめに”に書かれているように
この馬は他の地にいる18・19世紀から登場し始めた馬達とは違って
『古代の遺跡』
彼女自身が読んだ『魔女』という物語の中からヒントを得、
それは初期鉄器時代まで遡り実在した“イケニ族”から、
彼女の創作物語になったのです

イケニ族は馬の部族
野生の馬を馴らし、子馬を育て、馬の数を増やしていく
まだキリスト教が普及する100年以上前も昔のお話です
そんな時から人は部族での営みや決まり事・部族間同士の争いがありました

このイケニ族の族長の末っ子ルブランという一人の少年が
生まれた時からこの物語は始まっています
このルブランは族長の息子でありながら三男ということもあり、
彼の上にいる双子の兄達とは見た目も考え方などもことごとく違っていました
兄達と似ているのは同じ親を持つということだけの共通点のみ
描くことの好きな彼から生まれる生き物達は
まるで生きているかのように息吹を持ち、
その中でも“馬”は特別でした
彼のすぐ下に生まれた妹がこの次のイケニ族を引継いでいきます
この時代の部族の長は代々族長の長女が婿を取り、
その婿が族長になるのです
そうして、『血』が続いていくのです
ですから、その妹の上に生まれたルブランは
父の族長や母からとても自由に育てられ、大好きな絵を描いて育ったのです

そして、彼の命の次に大事な一緒に成長していく親友ダラが
妹と次のイケニ族を引く役割、族長へとなっていくのです・・・

もちろん、そこへ行き着くまでには辛い物語の上に成り立つもの
そして、この地に『白い馬』が駆ける姿が登場する要因ともなっていきます
他の部族との部族間同士の争いです・・・

この物語はサトクリフの作品の中でも比較的に短い物語ですが
その語り口はルブランの苦渋の選択により
今日にまで私達を圧倒するこの馬がどのように、何故描かれたのか・・?
そして、この馬に秘められた昔々の人々の様々な『想い』に
この物語を通して私達は知ることになります

神話のようなこのお話しを読み終えると、
妙に『人』の想いいうものは例え肉体がなくなってもこうして受け継がれ、
目にも残っていくもんだと納得せざるを得ないのです・・・

きっとこの地で『ケルトの白い馬』を前にしたら
心にルブランとダラの想いを感じ、
耳に馬駆ける部族の荒々しい蹄の音や風の響きを聞き、
目には人馬一体となったイケニ族が北へ向かう後ろ姿が映るかもしれません・・・














こちらのページに関しては、全て私の独断になります
お読みになっていただいた後のご感想は、
皆様それぞれに感じることに相違があるかと思います
少しでもお楽しみいただけたら幸いです
  





Top New ページのTop 

03年 9月 10月 11月 12月

04年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

05年 1月 2月 3月 4月 5月 6・7月 8月 9月 10月 11月 12月

06年 1・2・3月 4.5月 6月 7月 8・9・10月 11月 12月

07年 1・2月 3・4月 5・6月 7・8月 9・10・11月