今月のお薦め本 



〜2004年 4月〜

                                                         
あっと言う間に『春』真っ盛り!です
東京地方では先週末が桜の見納め・・・もうすでに北の地方へ進まないと今年のお花見はできません
(しかし・・花より団子・・と言う方も多いことでしょう・・私も含め・・)

新しいシーズに入るに当たって、そろそろ生活にリズムが出てきた頃ではないでしょうか?
彼の国はその年によっては今月がイースター休暇になるかどうか?はありますが
折りしも今年は今月がその年・・・
暖かいと思いきや・・雪が突然降ったりもします
しかし、その休暇が過ぎると一気に『春』
どんどん陽も長くなり、旅行には打ってつけの花盛り
新緑・緑がより美しくなる頃
思い立ったら、即出発です!!

さて、今回も様々なジャンルから英国物・・・をご紹介していきます

そして、来るべき時がきたら、すぐに飛び立てるように・・・

例え、今すぐ旅発てなくとも
読んでおいて損はありません・・・と思います!!




【吾輩は黒帯ブラックベルトである】
日本人拳士ロンドン道場痛快修業記

林 信吾著 小学館 定価¥1,500+税 2000年初版




吾輩は黒帯である ご存知林さんのちょっと今までとは趣きの違う1冊です
正直こちらでご紹介しようか・・?
いかがなものか・・?
ちょっぴり迷いました
タイトルを見たときにただ『おもしろそう』
という
第一印象で、旅と結びつく著作(失礼)とは
思えませんでしたから・・
しかし、最後までガハガハ(これも失礼!)と
読み進むうちに・・やっぱり!林さん!
10年間ロンドンに住み、“欧州ジャーナル”の
編集長もされ、数々の辛口の英国論・独自の評論など
多彩な著作を発表なさっている方ですが、
ロンドンでまさか少林寺拳法道場で修行なさったとは!
1996年から99年に「月刊少林寺拳法」に
連載したエッセイをまとめた本書です
実際は1983年に著者がロンドンでの留学期間中に
渡英荷物の中に1枚の胴衣を詰め込み、
池袋で修行していた続きとして、ロンドンでも・・・と。
但し、彼は一応(失礼)2段、有段者でありました

と、ここまで・・そうか・・彼の一刀両断の文体もやはり・・
体育会系であったか・・・と妙に納得・・
常に彼の文章には1本骨が入っているなあ、と感じるのは
出所はこういうところから来ているのか・・と妙に納得 

そんな林さんのロンドンでの道場修業記なのですが
そこはやはり・・今までの著作の流れは外さず、
日本に於ける【道】文化と英国のみならず
他の国との文化の違いを
常に冷静な目で捉えて楽しく伝えていらっしゃいます
(そんなところが笑わずにはいられない著作なのです)
しかし、それは少林寺拳法だけでなく、
日本独特のスポーツが海外へ広まるにつれ、
そのこと自体はとても喜ばしいことであると同時に
そこではすでに日本を飛び出た瞬間、
『日本文化』という切っても切れない大事なものが
置き忘れられ、単なる1つの“スポーツ”としてしか
見られなくなってしまう現実の姿を・・
また、海外で育つその【道】としての行く末と、
その指導に懸命に当たっている我が同朋の先達のご苦労も
目に見えるが如く鮮やかに映し出してくれています

もしかしたら、きっとそのことは逆のパターンでも
言えることなのかもしれませんけれど・・・。
(特にラグビーについ私は例えてしまいます)

そして最後はそれぞれの文化の違い、教育の違い、
考えの捕らえ方の違いを
“林流”に楽しく鋭く表現されている1冊です
それは現在の日本の状態をも見据えた
厳しく見つめる目にもなっています

最後の解説で漱石記念館恒松さんのお言葉にもありますように、
これから彼の国へ留学されようと思っていらっしゃる方や
教育関係に携わっていらっしゃる方が出かける際には
是非ご一読されることをお薦めしたい1冊です


 





【気分は羊、英国の旅】

野村 好美著 河出書房新社 定価¥2,000+税 1994年9月初版



気分は羊、英国の旅 初版を改めて見ると・・・1994年約10年前の本
しかし何時の時も私の目と鼻の先、書棚に鎮座していた本だっただけに・・・・
今回久しぶりに読み返して見ました


著者は版画家さん、その前は製薬会社の薬剤師さんを勤められたという・・
ちょっぴり変わった経歴の現在は法律学の教授をされていらっしゃるそうです
いくつのお顔をお持ちかしら・・と想像しながらこの本を眺めて見ると
あっと言う間に時間がのんびりと過ぎていきます
その流れている時間の間は正に『羊』になったようです
本の中に顔を埋めてひたすら読む・・読む・・・読む・・
(羊はひたすら草を食べる・・食べる・・食べる・・・)

この大きめの1冊には、野村先生がスケッチブックを片手に歩いた
英国中の田舎道、パブリック・フットパスで
出会った風景や動物・花・人物を
スケッチと水彩画をも描き、綴った紀行エッセイです

訪れた地方はコッツウォルド・デヴォン・ノフォク・ノース・ヨークシャーと
最後はロンドンです

ご本人は幾度かの短期渡英されていらっしゃる期間に歩いた街のようですが
ロンドンを中心に北はスカーバラから南はトーキーまで
手軽にひょいっと行ける場所ばかりです
ロンドンから1泊旅でお天気の良いこれからの旅に一つ、
コースに入れられても宜しいかと・・・お薦めします
何故ならほとんどの場所をご自身の足と公共の運送機関を
使っての旅が多く見受けられますので、
実際にこの地方へ・・という御希望であれば
ガイドブックのような読み方もできます
特に私は『デヴォン』ではおなじみの街がいくつか登場しますので
何度目を通しても、そうそう・・ここのバスはこういう風に行っていたっけ、と
懐かしさもひとしおです

よく歩いていて、日本と違うよなーと思うことの一つは何と言ってもお天気
そのお天気からその日のお食事やお宿のこと、そのお宿の動物達と

淡々とご自身の目に映った風景を綴られていらっしゃるのですが、
そのご様子が随所に描かれている水彩画の淡い絵のように
情景が徐々に浮かび上がってきます

(カラーでない絵にはものすごく書き込みがしてあって
出会った動物達の毛並みがとてもやわらかそうです)


ご友人の小さなホーム・パーティーでの会話や
街中のレストランでは口に入ることのない・・実は英国中で1番美味しいと思う
その家庭の様々なお料理のお話

異国からの旅人だとそのような経験はあまり味わうことができないと
思われがちですが・・・何の、何の!!
例えば気に入った居心地の良い宿泊先を何度か訪れるうちに
運良くそのような場面に遭遇できるかもしれません
又は田舎のファームコテージでの滞在ですと、
お夕食つきの宿泊施設も多くありますから
そうなったらもう“この国1番のおいしさ家庭料理”を味わうことができるのです!

これからの季節にご出発なさる英国の旅には
パブリック・フットパスを巡るご予定も1ヶ所入れてもらえると
いいなああ・・と私はいつも思うのです・・・






秘密の花園をさがして】
イギリスの庭めぐりの旅

高見澤 幸子著 株式会社 北水 定価¥1,600+税 1999年初版




秘密の花園をさがして この本を開くと先ず飛び込んで来るのが一つ一つ丁寧に
描かれた花・草花・ハーブの水彩画
とてもやさしいオープニングだと思いました

著者の高見澤幸子さんは後ろのご紹介を見ると、
アロマテラピー、ハーブ・コーディネーター

フワラー・コーディネーター、庭園デザイナー、樹医さんなどの
資格をお持ちです
『はじめに』からひもといてみると、
この旅に出るまでの著者の想いが綴られています
その中でこの1冊に記されている旅へ行き着くまでの
長い長い道のり・・・
その行程は私と同年代の女性にとっての経験としては
とても重すぎた時があった・・ということ・・
ただ一つ子供時代から花が好きで、
そのことが今日の著者の全てを物語り、
また行き着くことになっている・・という大事なことを
最初に伝えてくれています

この1冊は全てがイギリスの庭園めぐりの
紀行エッセイではありません
90%英国、残り10%がフランスです
しかし、道程のおおおそが英国の旅だったから・・
ということだけではなく、
著者の目指した目的以上に与えてくれた大きいものが
ほとんど英国だったのです
(残念ながらその後のフランスではちょっと違う側面もあり
ちょっぴりおフランスファンの方には耳が痛い部分もあります
そのことも高見澤ご夫妻にとっては大切な1つのご経験かも・・
旅に出ると様々な体験ができるのでこのようなことも
旅ならでは、だと思います・・・)

写真家のご主人との2人旅で、
到着後即刻レンタカーを借りてのスタートは
これからの個人旅行者、また彼らのような庭園巡りの旅には
かかせないものでもあるでしょう・・・
日程の決まった旅にはやはり時間の流れに敏感になりますから
公共の交通手段ではどうしても計画全てを消化することが
難しいかもしれません・・・

そして全編を通じて、必ず登場するのは『宿』の確保のエピソード
これを外して読まずにはいられません
料金などのレート表示には若干現在とは違ってきているとは言え、
ほとんど彼らが受けたお宿の印象は変わらないはずです
レンタカーということもあり、
都会ロンドンではかなり苦労した様子、
また庭園見学時間のこともあり、で・・・
どうしても庭園巡りが先になるので
スレスレの宿探しでもほとんどの街でお宿で困った様子もなく
逆に「このB&Bってどこかしら?」行ってみたいなあ・・と
思わず地図から場所を想像してしまう自分がいました 

著者は庭園・・ガーデニングなどに関しては『プロ』です
その彼女達が巡った庭園はとても興味深い場所ばかりです
全てを行こう!と思ったら、レンタカーでの移動は必須です
そのくらいこの4週間という間に(残り1週間がフランスでした)
かなりの濃密な見学ルートと距離数を移動されていらっしゃいます
しかし、そのいくつか車なしでも訪れることの出来るお庭や、
更に見学だけでなく観光できる街も少なくありません
(何故なら私も公共交通手段で偶然同じお庭を見学に行ったり、
滞在した街も登場していましたから・・・)

庭園巡りの旅のガイドブックというだけでのお勧めではありませんが、
初めてのレンタカーの旅での個人旅行の愉しさや
一生懸命なお二人の姿が目に浮かぶ・・・
そんな微笑ましい1冊なのです 

しかし・・もちろん・・私は『庭園巡りの個人旅行』ガイドブックとして
何度でも読み返してしまいますけど・・・


 







こちらのページに関しては、全て私の独断になります
お読みになっていただいた後のご感想は、皆様それぞれに感じることに相違があるかと思います
その旨ご了承の上、お楽しみいただけたら幸いです
  



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