今月のお薦め本 



〜2005年 08月〜

                                                         
旅行業界で最も忙しくなるこの月は、暑さと共にスタッフ一同気持ちも高揚する月でもあります
旅に出られたお客様のご帰国とご出発
そして、来月の遅い夏休みをお取りになる皆様の手配
その日中に帰宅できる業界人は役職の皆様ばかり・・・我々雑兵は日々仕事に忙殺されます

もしご家族・恋人がこの業界において役付きでなければ・・・・本当にお気の毒ではありますが
・・・夏の休暇は6月に先取りするか・・・・又は・・10月までご辛抱下さい
まだ今年の夏期休暇がこれからの皆様へ
我が国より一足先に秋にある英国関係の本でお楽しみくださいませ



さて、今回も様々なジャンルから英国物・・・をご紹介していきます

そして、来るべき時がきたら、すぐに飛び立てるように・・・

例え、今すぐ旅発てなくとも
読んでおいて損はありません・・・と思います!!




しっかりものの老女の死



しっかりものの老女の死

ジョイニー・ボライソー 著  創元推理文庫  ¥780+税  2005年03月初版



久しぶりに英国ミステリ本です
しかも舞台は大好きなコーンウォール地方が舞台の第2作目

当然第1作目も楽しんであっという間に読み乾して!の第2冊目
時は現代ですが、
お話の進み方は英国の“ウサギの足”の〜〜んびりとした土地柄・・・と思いきや
・・人の怖さというものは場所に関係ありません・・

世界中の読書家ばかりではなく、
映画ファンも魅了し続けるアガサ・クリスティーが生まれたのもお隣の州デヴォンです
この地方に住む人々のやさしいイントネーションの英語を思い出すと
おおよそ「犯罪」とは無縁に思えるのに・・・
なかなかどうして、英国の南西地方もミステリの宝庫です

作者のジェイニー・ボライソーは
前作『犯罪者達の事情』で日本の翻訳本のデビューですが
本国英国では本書のシリーズをすでに7作目まで発表し、
別のシリーズもすでに12冊、
ノンシリーズ物4冊を発表している人気作家さんの一人です
もう一つのシリーズ物の舞台がコーンウォール地方かどうかは判りませんが
もしこの地方のお話が部代であれば是非翻訳を!!
創元社さん!御願いします!・・というところでしょうか・・・

 

第一作目の『容疑者達の事情』からこのシリーズの横糸は
このコーンウォール地方のおなじみの土地や街 
主人公のローズが住む場所
(村や街中ではなく)は
ロンドンから最西端とされる鉄道主要駅のペンザンス(Penzance)から望む大きな湾
マウント湾をぐるっと回った
ニューリンという小さな村近郊
物語の縦糸はその土地の人々の生活を織り込みながら
徐々に進んでいきます

ローズの家からはお天気の良い日は対岸側に見える
この近辺の観光名所にも必ず挙げられる
『セント・マウント・マイケルズ』がそこここに登場します

おフランスの世界遺産指定されている「モンサンミッシェル」には
その規模も知名度も比べれば小粒ではありますが
この『セント・マウント・マイケルズ』は私もお薦めの見所 

海にぽっかりと浮かぶ小島の天辺に聳え立つ小さなお館
海の潮の満ち引きによって海に浮かび上がる細い歩道を歩いて
小島へ辿り着くことができるか?
または、その海の小道が満ち潮で歩くことができないときは
ちいさな渡し小船に乗って上陸することができます
私はこの島に今まで3度訪れていますが、
そのどんな時期にでも地元の小学生の見学ツアーにぶち当たっていました
地元の歴史上でも重要な当時の貴族のお屋敷であり、
軍事上でも攻め込まれることを考慮した造りの建物は
生きた勉強の題材なのでしょう

または時間が許せば、
静かな美しい白砂の海岸から海に浮かぶ小島の館をのんびりと眺める時間も至福の時
是非、ここまで訪れてちょっと一息いれたい時の場所としてもお薦めです

  

40歳代前半と思われる主人公のローズは
本職は“画家”と言いたい所ですが
数年前に20年連れ添った伴侶のディビットが亡くなってからは
生活の為写真家としてや
観光客の為に水彩画で描いた風景を
セント・アイヴスにある長年の友人でもある
バリーの店にカードとして卸し糧とています
そのバリーの店は古くから芸術家の集まる場所として
現在でも英国の中でも名を馳せているセント・アイヴス

中でも日本人陶芸家の浜田庄治に師事し、
英国の中でも著名な陶芸家バーナード・リーチと
その弟子であり夫人でもあったジャネット・リーチの工房や
テート・ギャラリー、彫刻家でも著名なヘップワースのギャラリーなど
街全体が小さなギャラリーのようで
海岸沿いのリゾート地としてばかりではなく
絵、彫刻、陶芸に興味のある旅人も羽を休める場所でもあります

地形に沿ってできた細い曲がりくねった坂道の多い街の賑やかな中心は
有名無名のアーティスト達の作品で溢れ、
観光に訪れる旅人は海の幸に舌鼓を打つばかりではなく
目にも楽しいショップが沢山軒を連ねています
美味しいフィッシュ&チップスやコーニッシュパスティス、
クリーム・ティーを目当ての滞在にも
 私は諸手を挙げて賛成するでしょう 

この第2作目にはまだまだ私達日本人には紹介されていませんが
コーンウォール地方の州都のトゥルロー(Truro)という
ちょっとポッシュな街は重要な役割で紹介されています
この街がこのように登場している(紹介?)されていることがちょっぴり嬉しいです
何故ならば素敵な街ですが、
あまりにガイドブックや様々観光地紹介から遠ざかっていて
常々悲しい思いをしていたものです
是非物語の鍵になるこの街での描写もお楽しみ下さい

とかく南西という土地柄、
のんびりとした穏やかな天候のイメージのこの地方は
実は自然の変化の厳しいハードな地方
いきなりの晴天から雷雨、大雨、
ローズも外出時には常にレインコートと長靴を車に常備しています
それはこのうさぎの国の端の端、
ランズ・エンドを訪れた方々が目にしたであろう、
断崖絶壁の続く島肌の風や波が抉り取った風景に通じているのでしょう・・
個性溢れる脇役達の生活や言動は“観光”としてしか知ることない私達に
魅力溢れるコーンウォールを別の視点から見せてくれます

  

英国ミステリの中でも最初のページから
うさぎの国の地図が占めされていることは少なくないと思いますが
今回は2作を通して私自身大好き南西部  の
この地方を充分に楽しめるシリーズに今後も目が離せないでしょうし、
物語の最後に最愛の伴侶を亡くした悲しみから立ち直る第1歩として
ローズは本来の画家として再出発されるスタートをきるであろう、
次回のローズの新たなスタートを期待にせずにはいられません

ロンドンからのんびりと列車でこの地方へ出かける際には
是非もう一つの隠れたガイドブックとして
そして・・・夜の就寝前の読み物としても連れて行きたい1冊です 










こちらのページに関しては、全て私の独断になります
お読みになっていただいた後のご感想は、
皆様それぞれに感じることに相違があるかと思います
その旨ご了承の上、お楽しみいただけたら幸いです
  





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