今月のお薦め本 



〜2005年 10月〜

                                                         
今年も早いもので残すところあと2ヶ月となりました
夏の暑さも騒がしさも鳴りを潜め・・すっかりと本を寝床で読むに相応しい静けさが戻ってきて・・
何時間でも許されるなら眠れる季節になりましたーーっ
・・ではなく!
うつぶせになって、肩が疲れるまで・・目が開かなくなるまで・・本に夢中になれる時間が何より 

あの本もこの本も読んでおきたい!
そんな想いが頭を離れず、ついつい読書箱から読む順番の本をいろいろと画策するのが楽しいです 
 

そして、それはいつか何よりも飛んで行きたい場所へのヒントになるかもしれません

さて、今回も様々なジャンルから英国物・・・をご紹介していきます

そして、来るべき時がきたら、すぐに飛び立てるように・・・

例え、今すぐ旅発てなくとも
読んでおいて損はありません・・・と思います!!





【図説 シャーロック・ホームズ




図説シャーロック・ホームズ


小林 司・東山 あかね 著  河出書房新社  ¥1,800+税  2005年06月増補改定初版





世界で最も名を知られている探偵と言ったら
この『シャーロック・ホームズ』を先ずは挙げる方が多いことでしょう・・・
今更ながら私如きがご案内するまでもなく皆様の方がお詳しいとと思います

実は元々私は“ミステリー”というジャンルを読み始めたのは大学も終わってから、
その事始がミステリーの女王と言われるアガサ・クリスティーでした
1冊読んだだけでもう完全に彼女の著作を読み切らないことには気持ちが治まらず
次々と早川書房さんの赤い背表紙を手にしていたものです
(と、言っても未だに読めないのが最後の1冊“カーテン”・・・)

ですから、この偉大な探偵の物語を
最も興味を持って読み始めたのはほんの10年程前からだったかと思います
この物語をすでに読み終えている友人達のほとんどは
小学生時代に図書館で最も人気のあるシリーズとして
少年少女文庫のような本で夢中になった・・・と聞きます
もちろん、私自身は本を読む前から
シャーロック・ホームズやワトソン君、
著者のコナン・ドイルも知っていましたし、
某NHKさんのBS放送、
今は亡きジェレミー・ブレットが演じていた
『シャーロック・ホームズ事件簿』は大好きで
毎週欠かさず観ていたので
本を読むこともなく充分ストーリーも判っていました

しかし、どうしても私自身はホームズの人となりを何故か好きになれず
人の良さそうなワトソン君の方が数倍も応援していた節がありました


  


  しかし、英国へ旅するようになると
ロンドンの地下鉄のベーカーストリート駅の壁がホームズ柄だったり、
何となしに場所も立ち寄りやすかったから何度か訪れたシャーロック・ホームズパブや、
お客様からのお問い合わせも幾つか、いただく中で
私自身もう1度読み直してみようと思ったのが下の1冊

シャーロック・ホームズ大全

厚さ3.5CMの私の持っている小説本の中でもダントツの厚みと
その本に綴られている文字は驚くほど小さな文字が並び
改めてこの物語の一つ一つが重く、丁寧なストーリーであることに感嘆しました

そして、ところどころにシドニー・パジットが描く挿絵も
この1冊の楽しみを増幅させています
今更ながらストーリーの内容やホームズの人となりや
最大のライバルのモリアーティ教授については
ここでのストーリー内容においてはご説明不要と思いますが、
テレビシリーズでは表現し切れなかった物語がたくさんありました

ドイルの生きた18世紀英国は
長い歴史の中でも最も栄華を誇った、とも言われるヴィクトリア時代
その時代には謎解きも化学が加わって
ホームズもハドソン夫人の下宿に実験室を作ってしまっていた・・・
(夫人にとっては、さぞかし迷惑な間借り人であったであろう、ことは想像に難くありません)
しかし、それも現代のものとはまだまだ掛け離れたものであったことは言うに及ばず
何者も見逃さない観察眼とそれに基づく判断力

謎解きの場面では
子供でも大人でも関心してしまう判りやすさ、と思いきや
実は人間の愚かさや残忍さ、弱さを露呈するホームズの物語は
本当に“大人の小説”だったのだと
最近読み直してみて遅まきながら感じています


  

さて、今回ご紹介する「図説シャーロック・ホームズ」は
そんな大人の代表とも言える
本国のみならず世界中に散らばるシャーロッキアンと呼ばれる、
ホームズファンの日本代表
1929年生まれの小林司氏と
1947年生まれの東山あかね女史のお二人

日本においてホームズ物についての著作は
この方達の目を通っていないものはないに違いありません
1977年に非営利同好会団体“日本シャーロック・ホームズ・クラブ”を
お二人で立ち上げ
その後は現在日本での会員数は
1300名にも増えていらっしゃる事務局を運営なさっています

そんなお二人が著作しているこの1冊は本当にシャーロッキアンのみならずとも
ヴィクトリア時代の英国を知ることにも楽しめます

今まで気づかずに歩いてきたロンドンの街並みや地方の街が
100年以上前の時代からあったものや変化なきもの・・ということにも驚かされます



本書では“ホームズの足跡が聞こえるまち”と証し、
1.ロンドンを歩く 
2.その足跡は英国全土に及び 
3.スイス・マイリンゲンは第2の聖地から
“我が友シャーロック・ホームズ” 
“シャーロック・ホームズとその時代” 
“海外ホームズ本の誌上展覧会”へと続きます

そして、随所に散りばめられた「コラム」はホームズの物語の中で
気になる様々を記してくれています
中でも“陰で人気を支えるワトソン”は彼のプロフィールを・・・

“寛容なハドソン夫人”では
彼女にとっては決して褒められる下宿人とは言えないホームズを心から尊敬し
ある時は現在で言う秘書のように自ら連絡役を買って出たり、
ホームズ不在時には感心しない依頼人の相手をしたり、
あまり健康的とは言えないホームズの食事のお世話をしたり・・と
彼等にとっては居なくてはならない存在の婦人を改めて紹介しています
そして、現在のホームズ博物館の1階は
ハドソン夫人の名前のレストランも開業しました

そして、最大のライバル
“宿敵モリアーティ教授”についてのページや
最も面白かったのは“ホームズの収入”
先祖代々の地主の息子とは言え、
次男坊のホームズに然したる財産はなかったろうに・・・
労働らしいものを営まずに
常に余裕ある暮らしぶりには・・何故?・・と思うこと、しばしばでしたが
この項を読むと「そうだ、そうだ・・ホームズは自分でこれほどまでに稼いでいたんだっけ・・」と
要らぬ心配の謎が解けました





現在ロンドンでは
日本人ガイドさんによるロンドン市内ウォーキングツアーでも
人気の高い「シャーロック・ホームズツアー」は
週に3本も出るほどになっています
このツアーは英国の古き良き時代のホームズとワトソン君が歩いた街を巡り、
彼の行きつけのレストランや事件の舞台となった劇場、
現在夜毎に集まるロンドンのシャーロッキアン達が集うパブから
最後はベイカー街221Bへと続きます
*こちらのツアーの詳細につきましては、
お問い合わせいただければご案内いたします

しかし、この1冊を熟知できれば、
ご自身での手作りの“ホームズツアー”を企画できますこと、請合います!

どうぞ、ヴィクトリア時代を偲んで・・・
また世界で最も有名な探偵の足跡を追いに
この1冊を手にロンドンや英国の縁ある地方へお出かけになってみてはいかがでしょう・・・

又は秋の夜長にどきどきしながら読む上質のミステリーほど
この季節に合うものはありません


      






秋の夜長







こちらのページに関しては、全て私の独断になります
お読みになっていただいた後のご感想は、
皆様それぞれに感じることに相違があるかと思います
その旨ご了承の上、お楽しみいただけたら幸いです
  





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