今月のお薦め本 



〜2007年 9・10・11月〜

                                                         
小さな時から本が大好きでした

母が自分は余り本を読むことが好きでなかったので
せめて自分の子供には、好きになってほしい・・と
私と弟には小さな頃からどんなジャンルの本も手に入れてくれました

しかし、弟とボロボロになるまで繰りかえし、
日々めくっていたのは
「動物図鑑」「昆虫図鑑」「植物図鑑」

そして、小学生の時大好きだったのは
「やかまし村」「ながくつしたのピッピ」や
「メアリーポピンズ」「くまのパディントン」のシリーズもの

中学生になって初めて自分で買った本が
「野生のエルザ」
このエルザは記憶している1番古い映画でもあります

そして、大人になってからはもうダントツは
ミステリー物が1番好き

特にこだわってきたのは
『英国女流推理作家もの』

旅するときも必ず1冊はバックに忍ばせます

そんな本からこれから目指す地名が出てこようものなら・・・
小躍りしてしまいます

今回は無理であれば
然るべきときにすぐにでも旅立てるように

事前の調べは綿密に・・・今日も元気に活字欠乏症にならないように!
徒歩と仕事以外では極力文字を読んでいたい

そんな夢中になれる・・ちょっぴり、お勧め本のご紹介です





又は旅発てないときの心の旅に・・・・








【灯台】


灯台



P.D.ジェイムズ 著  青木 久惠 訳  ハヤカワ・ミステリ  ¥1,800+税  2007年06月初版







今現在どんな作家が1番好きか?と尋ねられたら・・・迷わず
この著者“P.D.ジェイムズ”と答えるでしょう

本名はフィリス・ドロシー・ジェイムズ

ご承知のとおり
英国を代表するミステリー作家の一人で
今回のこの1冊は17作目にあたり
なんと85歳の時の作品になります

この国の大家でもあるクリスティーが亡くなったのは86歳
まだまだ、これだけの長編を書き上げる彼女の意欲に
ただただ驚愕するばかりです

1920年生まれの彼女は1940年に結婚、
先の大戦で従軍したご主人は長患いの末
この世を去ったとき
2人のお嬢さんを育てるために
国民健康保険協会に勤務するかたわら執筆活動を続け
1963年から現在まで続く
ダルグリッシュ警視長シリーズ第1作目にデビューしました
その後はもう一つのシリーズ女性探偵のコーデリアを誕生させて
現在までに今回ご紹介の17作の作品を発表しています

その後、1983年に大英帝国勲章中等勲爵士、
1991年に一代貴族の男爵の称号を受け、
現在でも英国ミステリーの第一人者として
本国でも益々評価高い作品を送り出しています

“ダルグリッシュ・ファミリー”ファンとしては
まだまだ彼等の活躍を期待したい、
シリーズものは主人公達に惚れこむ気持ちが大きいので
いつまでも登場人物共々にも元気でいてほしい・・・

現在は87歳というご年齢
まだまだ、この著者に対してのエールは惜しむことなく続きます





英国と言えば
やっぱりミステリーの本家本元
様々な作家が次から次ぎへと日本でも翻訳がされています
私自身がミステリーの“初版”がクリスティーだったこともあり
その後はずっと英国産の本ばかりを追ってきました

もちろん、同じ欧州のくくりでおフランス・サスペンスものの
パトリシア・ハイスミス
(子供の頃アラン・ドロンのハンサム振りに
ただただびっくりした“太陽がいっぱい”の原作者ですね〜)

そして、米国産も同じように
女性作家というカテゴリーで同じように読み進んできた、
“女性探偵もの”としても双頭の2人
スー・グラフトン、サラ・パレッキー
コージーものの大家シャーロット・マクラウド、クレイグ・ライス、
 宗教ってすごいな〜と夢中になっている
フェイ・ケラーマンなどなど・・・
動物達が活躍したり、ミステリ書店主、女性警視ものや
とにかく幅が広い

英国産のミステリーとはどことなく
どのような分野・・女性探偵もの、コージーもの、現代ものでも
どこか“泥臭く”
“歴史を匂わせる要素、身近な街、風景”
“科学的な分析については余り出てこない”
主人公の洞察力に重きをおいた謎解きは
身近なものにとても思えてしまいます

しかし・・考えてみれば“007”を生み出したお国柄なのに
それも、ちょっぴりおかしい・・・気もしますけど・・

米国産の女性検視官シリーズも面白かったけれど
シリーズを追うごとに「現実離れし過ぎて・・・」
でも、実際はより現実に近いのかもしれないけれど
自分の世界からかけ離れていて
私とっては想像だけ、の世界になってしまうのがふしぎです

何故か自分が手に取る英国産ミステリーは
コージーものからリアルなものまで
気持ち身近・・と感じるのは、単なる「英国贔屓」かもしれませんが
安心して読み進むことができ、
読書の楽しみを深く、深く、深海の如くしみじみとさせてくれます




英国産でのミステリー作家女性3人という言われたら
私はこの3人

No.1はやっぱりクリスティー

次ぎに控えるのが今回のP.D.ジェイムズとルーシー・レンデル
よく上記2人は肩を並べて称されますが、
それぞれ持ち味がまったく違っていて
読み応えが十二分過ぎるほどあります
(私にとっては余りドロシー・L・セイヤーズは魅力を感じないのです・・・

ご存知クリスティーは何故か安心して読めるもの、
それが最後の結末が救いのないものだとしても・・・

しかし、レンデルは人の影、暗さ、それに付き纏うサスペンスが常にあり、
時には最後は同じ人として暗さばかりが残ってしまうこともあります

暗くて救いのないものは最後まで救われない
ですから、彼女の作品の中でも家族色濃い比較的楽しく読める
ウェクスフォードさんシリーズが私には1番好きです
(レンデルファンはこのウェクスフォードものについては
両極端に好き嫌いが分かれるそうですが・・・)

対してP.D.ジェイムズの代表作品でもある
ダルグリッシュさんのシリーズは
スコットランドヤードの警視長さんという地位にありながら
詩人、というもう一つの顔を持ち
生い立ちも牧師さんの息子さん、という
両極端な生活を混合させている
シビアな現実と人の救いを持ち合わせているように
物静かな・・・それでいて、思いっきり「英国人」の
ちょっと今までにないキャラクターとして

すでに登場から40年以上も経つ、という長丁場の主人公


彼自身の生い立ちや結婚後の不幸など
明るい要素は余りないのだけれど
それでも、時にはうじうじと考える様子や
恋人に対する気持ちがイライラするほどまじめで
ついついアングロサクソン系だよな〜と思ってしまいます


そして、彼を取り巻く部下達のキャラクターは
ついつい時にはロンドンの友人達を彷彿させるくらい
身近な存在に思えるほど魅力溢れる人物たちです


彼女の作品はとことん暗い結末であっても
登場人物の次ぎに繋げようとする気持ち、
決して無理にそのような方向に向けることなく
たんたんと綴られる“普通の感情”で終わる・・・
そんな要素が感じられて、
いつも読後が納得のいくもの、として
次ぎに出逢う彼等の進展ぶりについ期待せざるを得ない・・
そんな、終わり方がとても好きです






この作品「灯台」は架空の島が舞台ですが、
周囲の様子は実在するコーンウォール州
(“うさぎ”の足先に位置する1番南西の州)
ニューキーという、とてもポピュラーな海岸の街からの沖合いの島

ニューキーの街も歩いたことがあるので
この街の様子の描写には思わずにんまりしてしまいます

そのニューキーの沖合いの小さな島で起こる
殺人が今回の事件です

実はこの時点で私はまだこの本の最後は読み終えていません

犯人もダルグリッシュも最後はどうなるのか・・・?
まったく現在は謎のままです

しかし、読み進んで行くうちに
この島で殺人が起こったときに居合わせた人物達は
被害者に対して何かしらの恨み、動機を持っていて
まったく縁もゆかりもない人々、年齢も立場も違うのに
彼等の証言から、彼等の持つ過去から
絡み合った糸が少しづつ・・少しづつ・・実は繋がっていて
事件に近づいていく、
その過程の描写が実に見事で目が離せません

それは、時には3世代前から続くものだったり
つい数年前のことだったりと
歴史的なことが日常につながり
セリフ一つも見逃せません



英国は私達の国とおなじように海に囲まれた島国です

大海原に浮かぶ小さな島、というと
私はついつい子供の頃大好きだった
“ひょっこりひょうたん島”を思い出すのですが
英国において思い出すのはクリスティーの
“そして誰もいなくなった”です

この『灯台』も同じように小さな島での出来事です
しかし、長い長い歴史的な事柄が現代に続き
そのことが今回島で起こった悲劇に繋がっています

読み終わった後に私自身
P.D.ジェイムズのこの1冊は
十二分救いのある“ひょっこりひょうたん島”になるのか・・?

はたまた今回の舞台のお隣の州デヴォンでの孤島
クリスティーの“インディアン島”になるのか・・・?


今晩あたりに結末までじっくりと楽しみたいと思います



    
 











こちらのページに関しては、全て私の独断になります
お読みになっていただいた後のご感想は、
皆様それぞれに感じることに相違があるかと思いますが
少しでもお楽しみいただけたら幸いです
  



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