今月のお薦め本





〜 2008年 01月 〜

                                                         
新しい年が明けて私達の国の経済はどうなるのでしょう・・・

と、年明け早々から昨年に続くオイルの高騰、円安(円高)、株の下落・・・と
まったく望みなく思われる展望ばかりが続く日本

普段は正直それほどに経済危機を実感はしないにしても
日々海外旅行に掛かる航空運賃のオイルサーチャージ、
各国の税金などを目にするたびに
“おかしい・・・?

以前は成田空港旅客サービス施設使用料\2040も高いと感じたあの頃・・
ヒースロー空港の税金約\14,000に比べたら
まるで赤子と大人の金額の差
それに約\17,000近くのオイルサーチャージはもれなく付いてくる

ツアーフィーはシーズン的に下がっても
それ以外に徴収される差額料金の高いこと!
(へたをするとツアー料金の半分近くになることも・・・)

そして、円安(一時は円高になっても)に伴う
現地での滞在費が私達の国に比べると遙かにお高い欧州
特に英国の物価の高さは昇り龍の如く・・・?という勢いです

こんな不安を抱きつつ年明けになっても思うのは
今年はどこの街を目指そうか・・・

たとえ僅かであっても
高くなる困難のハードルを越えるのではなく、
避けながら、除けながら、たとえ迂回しても
今年も英国の旅を続けるぞ!

と、言うわけで今年もそんな旅へ行き着くまで
日々を愉しませてくれる英国に関するお薦め本を
一緒に楽しんでいただけたら本望です












【おしゃべりなイギリス】






高月 園子 著  清流出版  ¥1,500+税  2007年09月初版






読み終わった後の痛快差は
久々にこの1冊に勝る他の本はない!とまで思いました


最初は今まで何冊も目にした
単なる英国在住の駐在妻の目から見た英国社会生活、と
余り期待はしていなかったのですが・・・
(ごめんなさい)

読み進む内に
似たような著作本とは一味も二味も違うぞーーーっと感じたのは
「本音」と思われる私も常に感じる様々な英国に暮らす人々の生活ぶり

決して“大人の国”だけではないし、
“慎ましやか”だけではないし、
“ゴシップ”が何よりもあけすけに大好きだし、
私達の国で日常に交わされる会話や対話よりも
特別に高尚なわけではないし・・・

私達の国でも様々な生活の中で
自分に合った友人達の集まり、仕事の上での仲間、
学校時代から続く友人達といった人々たちとの会話はそれぞれに違うもの

そんな中でも
やはり普段一緒に過ごす時間の長い
仕事仲間とのおしゃべりは
身内(同じ部内)の内容ほど盛り上がり、
一時の仕事の辛さを忘れさせてくれる
抜群のカンフル剤にも匹敵するのでは?、と常々思います

共有することにより仲間意識も高めてくれる
それは、一つの要素でもあるからだと・・・・

著者は渡英間もない頃
異国に住む同じような境遇の同胞でもあり大先輩から
一つのアドヴァイスをもらいます

「英国の人々とは他人の噂話なんかしては駄目
軽蔑されてしまうわ、
こちらの人は自分というものを持っているから
他人のことなどには興味はないのよ」

著者はその教え通り
約2年間もそのように英国の人々と接していたそうです
その結果その期間1人として英国人の友人はできなかった・・・
まるで忠告してくれた大先輩の罠にはまった如くのように・・・・




噂話だけで友人ができるとは言い難いけれど
それでも、著者が語っているように
・・自分でない自分で勝負しても、退屈でわけのわからない人間に見られ
誰からも本気では相手にされない・・・中略・・・
・・・きちんと本音を語らずして、どうして他人から信用されましょう・・・中略・・
議論のできない無能者の烙印を押されるか、
何を考えているかわからなくて不気味、と思われるのが関の山・・・

英国の人々は“大人”で他人のゴシップには干渉しません、的なことは
先人の方々から時折伝えられてきたことではありますが、
実際はご承知のとおり
故ダイアナさんのことから始まる王室のゴシップなぞも
(今や異国に住む私でさえも
ウィリアム王子とヘンリー王子のガールフレンドのことは知っています!)
海を越えた私達の目や耳にまでほぼリアルタイムで
様々なゴシップネタが飛び込んできます

当然その国に住む人々が噂話が嫌いなわけはありません!

著者は20年住んでいるイギリスの生活から
その噂話を通して忌憚なく
からっとした語り口でイギリス風ユーモアを交えながら
私には決して縁のない(と、今から白旗を振ってしまうのも・・・
駐在員の妻という立場を充分に生かして
英国風と日本風の両方の笑いを提供してくれる1冊にもなっています

生活の中で母親としても、駐在妻としても、1人の女性としても
時間を長く過ごす同じ境遇の様々な人々の中で囁かれ、
時には大ぴらに語られ続けられたおしゃべりの中に
異国に住む短時間滞在の私達には感じ取れない日常を
皮肉まじりなユーモアではなく、
カラッとした語り口ながら鋭いつっこみを交え
何となく暗い話題の多い年明けに
久しぶりにカラカラと笑える、
女性の特典を生かした1冊だと感じたのは
おそらくは私だけではないはず

旅とはちょっと無縁な1冊ではありますが
どうぞ、寒い日の読書として暖かいお茶をいただきながら
酸いも甘いも噛み分けた
大きな気持ちを持った日本女性から見た、感じた、考えた
彼等の普段着での生活などを楽しんでみてはいかがでしょう


     



さて、本書についての前に肝心の著者のご紹介をほんの少し

1952年お生まれの東京女子大ご卒業
翻訳のほか、音楽関係記事やエッセイなどを執筆中
ご自身の執筆としては本書が1冊目にあたります

ロンドンのジャパン・ジャーナル社発行『月刊ジャーニー』に
1992年から2002年までの10年間にわたり
「駐在員夫人の独り言日記ー深野家の人々」というタイトルで
120回連載されたエッセイを中心に
他の媒体に掲載されたものと一緒にまとめたものが
記念すべきこの第一冊目の本書になります

内容は第一章から第五章まで
各章には16から9までのエッセイが集約され
一つ一つのテーマが日常の出来事を中心に
駐在妻だったり、母だったり、若い女性にとっては先輩女性だったり、と
それぞれの立場からの見かたにより
痛快にまとめ上げています

経験のない話に聞く“駐在妻”の日常とはこんなものなのか・・・、とか、
イギリスに於ける子供の学校ってこういう制度もあるのか・・?とか、
中には知り合いでこんな女性がイギリスに長く住んでいて
日本に帰ってこないのはこんな理由もあるのか・・?とか・・・


  


第一章では先ずはイギリスでの住宅事情・・・と思いきや
実際はタイトルにもなっている
“西日の当たる快適なリビング”は最初の1文のみ
・・日本と違って西日のあたる部屋は人気あります・・というものでしたが、
それ以降のエッセイは子を持つ母親達のことで
「公園デビュー」ならぬ「子供の母親たちの集まりデビュー」や
その驚くことに母親達のティータイムに語られる
各国集まるロンドンの中での各国人のイメージやら、
夫婦間の違いや子供のお受験など
ちょっとした井戸端会議でのおしゃべりから考えさせられるもの、
笑えるもの、驚くものと満載です

第二章の出ました!“華麗なる駐在員夫人たち”
自身の力で長く住むことができないと悟った20代後半時の私は
かれこれ10数年前まで、
まるで小学生の女子児童が憧れるスチュワーデスさん
(現在はフライトアテンダント、と言いますが
私達の時代はスチュワーデスさんでした)の如く
夢見ていた『駐在員妻』
ご主人を朝会社へ送り出したあとは
自由自在に異国での生活を楽しむのよ〜と憧れた高地位でした

現在はさすがに夢から醒めて、ただただ現実を直視し、
働けど・・・働けど・・・じっと貯金通帳を毎月睨み、
英国への慕情を募らせるばかりではありますが
そんな夢の立場の奥様達の生活を
垣間見ることができるエッセイが面白くないわけはありません

何故ならば(まったくの根拠なしですが)もしかしたら私だって
経験していたかもしれない数々のエピソード
あわよくば辛い出来事にはちょっぴり意地悪的な面白さも加わるし・・てなもので
高月さんの第二章は期待通り!楽あれば苦あり(その逆も然り)
駐在妻の苦労と涙と笑いがぎっしりと詰まっております
世界経済に最も近い!と言っても過言ではないかと・・・・
この章から改めて夢だった“駐在妻”は夢のまま・・
私には到底勤まらないと
ここでも白旗を揚げるしかないように思いました

第三章では“涙で視界がかすむ参観日”
2人のお子さんを持つお母さんからの立場だけでなく
ここでも異国に住む住人としての日本と教育の場の違いや
それをけなげにも乗り越える我が子たち、同胞の親たちの様子や
イギリスの家庭事情にまで食い込んで
現実を見つめる著者の表現がこれまた彷彿絶頂です

当然家庭の数ほど様々なスタイルはありますが、
共通しているのは「教育ママ」スタイルはほぼ変わらない、ということ
しかし、階級ということが息づいているイギリスでは
それを通すと逆転的な家庭も多く見受けられる、という
私達にとっては不思議な世界

誠に世界は広く、私達が日常普通と思うことが
ここでは普通ではなく、逆に??と思うことが日常だったりと
子供達の世界も中々大変です

そして、第四章の“日本人女性がもてるわけ”という章は
本当かいな・・?と首かしげようなタイトルです

正直長く何度も英国中を旅している私が自慢するほど
『もてる』のは
両親に近い世代のおばあちゃんやおじいちゃん達

1度ならずとも声をかけてくれたのは
翌日結婚するという友人を祝って
男性達だけでパブへ繰り込んでいたグループからのひとコマのみ

それとて、そのグループの男性陣は最後の独身者であった
その日の主役を称える夜であった、というから
未婚男性との出会いは皆無に近い・・・

それでも、冷静に周りを振り返れば
お世話になっている諸先輩のガイドさんたちのご主人は
そういえば英国人
やはり日本女性は人気があるのかーーーっっ

と、思いきや・・やはりそこは高月さん・・・
とても冷静に同胞の女性を観察し、且つ真綿で首を絞めるような文章はなく
バサッと真実(ご本人は“独断と偏見”とおっしゃっておりますが)を
私達の目の前に突きつけてくださいます

どうぞ、英国の旅ばかりでなく
若い(?)みそらで海外旅行に明けれ暮れる女性達は是非ご一読を!
そして、そのようなお嬢さんをお持ちの親ごさんにもお薦めします
私も一気に目が覚めたように感じました

最後の五章は“大人の国ニッポン”
これは完全にタイトルをそのまま読み取ってはいけません
この辺はしっかりと「英国風」では・・・?と感じ取ってしまった私は
すっかりとこの高月さんワールドを
ほんのちょっぴりでも理解してきたためでしょうか・・?
さすがに最後の章までくれば
感じ取るのが容易くなってきたようです

イギリスと日本と大人の女性として双方を読み取った著者ならではの
愛情こもった二国へのメッセージにも読み取れました

この辺は短い旅でも充分に感じ取れることでもあると思います


    


私は今後も高月さんのエッセイにとても期待しています

どんな高さの視点でもなく、そのまままっすぐに見れば見えることを
表現できることって本当に凄いことであるとともに
今度は何を見て、感じたことを伝えてくれるのだろう・・・と

ヒースローへ着く前に是非ご一読をお薦めします
退屈な11時間50分が
機内の映画以上に楽しめること!請合います!

















こちらのページに関しては、全て私の独断になります
お読みになっていただいた後のご感想は、
皆様それぞれに感じることに相違があるかと思いますが
少しでもお楽しみいただけたら幸いです
  



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