今月のお薦め本

    



  〜2010年 7月〜


  夏休みまじかのこの月は
  ロンドンはウィンブルドン決勝トーナメントで始まり、
  北のスコットランドでは全英オープンが盛り上がり・・と
  スポーツに湧き上がる1ヶ月です

  本来ならば4年に1度のイングランド発祥
  最も世界で盛んなスポーツでもあるフットボールの祭典


  

  
サッカーワールドカップの決勝トーナメントで勝ち進んでいたとしたら
  今頃は国中が盛り上がっていたかもしれません


  残念ながらイングランド期待の星★ルーニーも点を入れることなく南アフリカを去り、
本国では帰国の際には怒れるファンを避け、
特別なルートで帰国せざるを得なかった代表が気の毒にも思えました


  特別通路から帰国したイングランドチーム
  うなだれて帰国したイングランド代表
   ルーニーとジェラード BBCニュースより


  そんな今月はスポーツに明け暮れそうですが、
  旅行者にとっては陽の長いこの時期をたっぷりと堪能して
  パブのオープンテラスでビールでも飲みながら
  そんなスポーツ談義に花を咲かせるのも良いかもしれません



  パブのテラス
  初夏のパブはオープンテラスから埋まっていく


  では、そんな羨ましい月にご出発できる方々も
  来年こそは!と虎視眈々と狙っている(実は私も・・)方々も
  ご出発前にちょっとパラパラとめくって楽しい英国についての1冊をご紹介いたします

一緒にお楽しみいただければ何よりです










【イギリスオーガニック農園への旅】



イギリスオーガニック農園への旅


竹脇 虎彦著 発行元 且Y業編集センター ¥1,300+税 2009年7月初版


著者の竹脇さんは東京は1963年生まれの写真家さんです
1999から2007年まで南イングランドに移住されていました

著作の冒頭“はじめに”では
何故家族を伴い
東京での生活からイングランドへ移り住みついたか・・?ということ
そして、この本が出来上がるきっかけが綴られています

1997年に海辺の街
ブライトンから西へ2時間ほどのウェイマスという街から
視覚障害者と健常者が助け合って操船する
ヨットレースの世界選手権に出場するため
その街に滞在したのが最初でした

いつかこういうところで暮らしてみたい・・という願いから
その2年後にあたる1999年から通算8年間
当時4歳だった息子さんが
帰国後日本の中学に入学するまでの移住期間でした

その間は特にイギリスでの収入を得る手段があるわけではなく
東京でやっていた写真撮影の依頼が多少あったものの
経済的には常に逼迫した状態であった・・と・・・

・・・中略・・しかし、東京で生活していたときよりも
沢山のモノやお金に依って暮らして居た時よりも
時間や空間、食べることに豊かさを求める生活がここにはあった

「Quality of life」という言葉
・・略・・
自分が何を善しとするかという、
自己を満たすに足る“質”を求める生活

著者の場合はその“質”は
“自らの労働によって土から食べ物をつくる、”ということに辿り着いた、と・・

そして、この本ではその“食べる”ことと
“それに関わること”を考え、
著者が移住したイギリスから
その後日本へ戻ってから再び訪れた来訪の旅

過去を遡るでもなく、
著者が今までも経験してきた幾度もの英国旅のそのスタイルが
そんな旅もあるのだな〜と・・

初めて知った今流行の「エコ」という言葉ではなく
あくまでも「オーガニック」としての旅

まだ私達日本人の旅のスタイルとしては少数派だと思います

是非可能であれば“やってみたいな・・”と一瞬思ったけれど
う〜ん・・でも20年前だったら挑戦していたかも
と、言うのは言い訳になるので、
正直なところもう出来ないな〜・・かもしれません・・・



でも、1個人としては
若い男性個人旅行者には是非是非こんな旅を薦めたい!
また、男性だけでなく女性でも・・否!年齢は関係ないかもしれません

だれか問い合わせてみてくれないかな〜・・と・・
すっかり楽な旅に慣れてしまった私はこの本から思いました

真剣にこれからの生活や未来の日本を考えるならば
こんな旅をいつかはしてみなくてはならないのかもしれません





著者は2008年
イギリスから居を日本に移してから1年3ヶ月振りに
再び以前暮らしていたフォレストロウ、という
サセックス州は丁度ロンドンの真下あたりにあたる
懐かしい友人の家から3週間の旅をスタートさせます

そのお宅は息子さんのかつてのクラスメート、ポピーの家
彼らの家は著者が働いていた
マイケルホールガーデンの果樹園に隣接している
日本帰国後に再会した古い友人でもあるのでしょう

翌日はそのかつての職場でもあった
ポピー宅お隣の果樹園を訪ね、
3日後には友人宅を後にウェールズへ車を進め
そして、著者の「オーガニック」の旅が始まります






2008年、この年はまだ今のような円高にはなっていなかったので、
車で旅する著者にとっては
そのガソリン代が高い・・とつぶやきながらも
最初に立ち寄ったのはカーブーツセール

このカーブーツセールは、
青空マーケットになるのですが、
それぞれ家の中で不要になった品物を
自身の車のトランクに詰め込み
(又は自身の家の前でもしばしば行っています)
大きな駐車場や空き地、ファームなどを利用して
フリーマーケットとして出品する・・という・・
夏のシーズンには良く見受けられます


そのフリーマーケットで
日本から持参してきた寝袋に加えて
テントとマットを購入


早速持参の「ORGANIC DIRECTORY 2007-2008」という
ハンドブックからスモールファームズという
いくつかのファームが共同体で行っているキャンプサイトを目指しました

ファームが自分の土地の中で
キャンプサイトを運営しているのですが、
決められた場所にテントを張っていれば
何処からともなくその土地のファーマーがやってきて
£4.00〜中にはキャビンが備えている農場もあるので
その場合は自身でテント設営しなくても
£6.00〜くらいから滞在できるようです


この時期は22時くらいまで陽が落ちない
英国では確かにテント、キャビンでの滞在は経済的、
且つエコ的な旅でもあります

その場所にはきちんとトイレ・シャワーは備え付けてありますので
日本でも1次的にブームにもなった
オートキャンプの英国版、と一言では言えないくらい
“自然に対してあくまでも優しい”設備になっています

そんな様子も著者の旅が進むにつれて紹介されていきます




そして、車での旅、自炊の旅で最も楽しみなのが
様々なファームショップへ立ち寄ることができること!

旅の目的は
かつてこの国で暮らしていた時に
果樹園で働いたり、ガーデナーとして“土”に関わってきたことから
ウェールズから全国的に注目されているCAT
(Center of Alternative Technology)
(実際は余り大したことではなかった・・と・・)、
その他ウェールズの南の海岸や小さな本の街Hay-on-Wye,
そして、北の国スコットランドはハイランド地方の
目指すフィンドホーンコミュニティ、
ポインツフィールド、ウエスターロセンストン、
そして、イングランド国境近くのロッホアーサーへと進みます




先ずは最初のフィンドホーンコミュニティは
スピリチュアルコミュニティ、エコビレッジ、教育センターであり
3人の創設者は1962年からこの地での活動をし、
世界的にも成功しているコミュニティの一つにあげられるそうです

こんな北のはずれの地によくも人が集まっているものだと
著者は以前ファームショップとして訪れたことがあり、
2度目のこの来訪にでは、
このコミュニティで生活する基盤をじっくりと観察していたようです

次ぎのポインツフィールドはハーブガーデンとしては
500種類近くのバイオテック農法で栽培されて
ハーブの世界では有名なところ





ガーデンのオーナーのダンカンは
著者が思う典型的なスコットランド気質な男性
このガーデンではこの夏の時期には
世界中から研修生を受け入れている、という・・
ほぼ自給自足している
野菜類満載のスコットランド料理が美味しそう!

著者はすっかりとここでは今までの旅の疲れを癒しているようにも思います




そして、ウエスターロセンストン
そのポインツフィールドのダンカンが日本を訪れた際に持参してくれた
美味しいチェダーチーズを作っている小さなファームです

今回の旅で初めて訪れた美味しいチーズを作るファームは
わずか15頭の牛からミルクを搾る、
普通の家の1部のようなところでこのチーズは作られていました



ファームやチーズつくりはおとうさんに任せて、
おかあさんは地元のオーガニック活動に盛んで
その自給用のキッチンガーデンを見せてくれました




そして、全編を通じてところどころに散りばめられた
著者のコラムでは
オーガニック有機野菜についての団体と
それが更にバイオダイナミックへと続く
現在の食に対する安全性からのみならず
人間の労働に対する感受性を取り戻す農法の本質へ・・・という、
しろうとの私にも解るようなこの世界の実情も語られています



さて、スコットランド最後のロッホアーサーへ
先ずはファームショップを訪れてみます

ここでは著者自身がイングランドで生活していたときに
バイオダイナミック農法で野菜を作っていたこと、

現在は日本で小さなガーデンで野菜を作り始めたこと・・・から
ガーデンを見学したい、と申し出ると
ヘッドガーデナー・クララの名前を教えてくれて

彼女からコミュニティガーデンの様々を案内してもらっています




このクララについてガーデンのこと、ファームのことを・・
はたまたそこで働くスタッフ達との食事から
彼らの日常のひとコマを共有し
そして、ここを最後にイングランドへと戻っていきます



再びロンドンへ戻り、
以前働いていたファームを訪れ、
著者の3週間の旅は終わりに近づきますが・・・
この1冊から英国の国の豊かさ、というものがありありと感じられました

自国の生産力は他の欧州の国々に比べて
極端に低い比率の英国はその数値を見事に年々上昇させ、
尚且つ体に安全なばかりではなく、
土に優しい手法を追求していく彼らは本当に“緑の指”持つ
(それはガーデナーへの言葉ですが
ここでは土に関係する人々全てに使いたい・・・)
プロ集団の集まりでもあります


普段見過ごしてしまいそうで、
また流行のように唱えられている“オーガニック”
本当の意味でのこの言葉がなんだったのか・・・?
この1冊から初めて意味を知ったようにも思いました




普段の旅では決して目にすることができない
イギリスのファームでの日々の写真や
実際に“できるかもしれない”と思う
ORGANICな旅の豆知識やOrganic Placesは
通常のガイドブックには掲載がない情報でもあります


全編通して掲載の写真は
さすがに写真家さんのもの・・本当に心穏やかになれます






今のこの夏の時期のみ訪れることのできる
(他のシーズンでもあるでしょうが・・収穫物は少ないのでは・・・?)
1番身近に嬉しい発見が満載の
ファームショップ巡りはどなたでも体験可能なことでしょう!


どうぞ、車での旅が可能な方は
ちょっとお手にとってみてはいかがなものでしょう




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