今月のお薦め本






  〜2010年 11月〜


1日1日と冷え込んで来る11月は
まだクリスマスには早いし・・
まして、“今年1年は・・”なんて思い起こすにもまだまだ早い!

それでも、陽が落ちるのが早くて
1日がとても短いように感じます

しかし、来る『冬』に備えて
動物達がせっせと“美味しいもの”と蓄えて動くように
私達もご自身の“好きなもの=旅”を集めて
とっぷりと陽の暮れる頃には
暖かい部屋の中でじっくりと楽しみながら春(出発)を待つ・・と・・・

旅の楽しみは用意半分、旅先で半分

冷たい外からちょっと立ち寄った暖かい店内の本屋さんで
まだ手に取ったことがない
英国に関する本を見つけた時の嬉しさは
気持ちまで暖かくなります

どうぞ、今月のご紹介の1冊も
暖かい本屋さん、とまでは行かないまでも
ちょっぴりでも旅のご参考、
次ぎのご出発のガイドの一つに入れていただければ嬉しいです










水彩で訪ねる ロンドンのベスト・パブ







あかいけ みちまさ 著 発行元 清流出版 ¥2,600+税 2005年3月初版





英国への旅の楽しみに一つに
“パブめぐり”があります



しかし、このパブはどんな小さな村にも必ずある、と言ってよいほど
英国中にあり、
その数は約5万数千件!とも言われています

それはもしかしたら郵便局の数に匹敵するか・・?
又は上回るかもしれません

それほど英国内(4つの国全てに共通)で
切っては切れないものの一つです

そして、“パブ”は歴史であり、文化でもある!

単なるパブはお酒をいただく場所、
食事を楽しむ場所、とだけは言い切れず
生活の1部で住まう人々のDNAにまで染みこみ
また、そのパブの建物全てが文化遺産!
とも言うべきパブがとても数多く国中にあります

お酒をいただけない方々は
もちろん!お茶はありますし、コーヒーをいただけるパブもあります
(もちろん!アルコール抜きの飲み物も!)

そんなパブについての本もガイドブックにすると、
割合日本で手に入れることは難しい・・・
(英国には毎年パブについてのみのガイドブックが数多く出版されます
時には英国観光庁のHPから購入したり、
AMAZONからも購入は可能ですが・・・)
何よりも日本語版が少ないです

確かにイギリスのガイドブックに載っているパブも
素晴らしいものがありますが・・・滅法少ない・・・

今回はたまたまAmazonで見つけた本書は
全てがパブ案内

しかも!!
英国中で数多いだけに難しい(私は・・)と思っている
ロンドンのベストパブ


手に取らないはずはありません






英国ではどんなに小さな村にも必ず1件はあるパブ

しかし、ロンドンのような都会では
歩けばパブにぶつかるくらい数多い中から
旅行者である私達が安心して
居心地良く過ごせるパブをどうやったら見つけられるのか・・??

パブは元々“イン”という旅籠もかねており、
それが村の雑貨に発展していったり、と
単なる酒場ではなく、
村など人の生活に欠かせない要素を持ち合わせていました

インも兼ねたパブ


人々の生活に密着しているがために
1件1件特色あるパブが出来上がっていきました

元々ご承知の通り
“パブ=パブリック”の略
だれが訪れても良い場所、ということになります

英国はお国柄まだまだ階級、という根強い文化(?)があり、
その内にパブリック=だれもOK=労働者階級
そうなると、労働者階級以外の人々は・・?となると
(彼等は階級を越えて一緒に何かを行う、ということはありません)
パブの中に“サルーン・バー”という
中流階級の人々の集う場所も出来てきました

と、言っても現在はその区分けが時代とともに緩やかになり、
そのどちらにも属さない私達旅行者にも
気軽にパブリックスペース、サルーンスペースともに
入れるようにもなった、と思います

ま、中には足を踏み入れたサルーン・バーで
日本人的中流階級だとj自分では思っていたら、
実は労働者階級の方に属していた、なんてことは私の場合は
ほぼ毎回・・・・
だとしたら、最初からパブリック・バーのみ訪れることの方が安全、気が楽!

ただし、それもそのパブ自体の様子が解っていてこそ・・・

また、仮に間違えた!としても
英国の人々には一時の旅行者、ということが解れば
暖かい瞳で見てくれる・・という温情もあるかもしれませんけれど・・・




また、パブは公共の場として
様々な特色を持つようになりました

パブ経営側としては
独自の特色をそれぞれに出すようになってきました

店内に英国の人々が大好きなスポーツを観るために
(衛星放送など有料スポーツ番組など)
スポーツパブを呼ばれるように大型スクリーンを設置し
皆で見られるような店内、特色を出す、スポーツパブ


スポーツパブでのセット


近年注目される美味しい食事に力を入れている、
ガストロパブ

大型ビールメーカーが自社のビールを前面に出す
チェーン系のパブ

ダーツやプール(ビリヤード台)など
ゲームを置いているパブ

などなど時代と共に様々なパブが生まれてきています

コベントガーデンのパブサイン


もし、小さな村や街であれば
そう数の多くないパブの中から
自分の行きたいパブへ足を運ぶことができます

しかし、星の数ほど目に付くロンドンのような都会での
パブ選びは想像以上に難しい・・・

また限られた旅の時間の中で
安全で(女性が一人でも入りやすい)、
居心地の良いパブを紹介しているこの1冊は私自身の
次ぎの旅のガイドブックとなりました







先ずは著者紹介から見てみると
あかいけ みちまさ(赤池 達正)氏は日本航空国際線機長




すでにこちらの出版会社さんからは3冊目が本書になります

機長さん、というからにはJLさんの路線としてみれば
ロンドン線は正に“$箱”
想像するに数え切れないほど滞在されていらっしゃる
世界の都市のひとつなのでしょう

そんなあかいけ氏の描く水彩画で描かれたロンドンのパブは
色鮮やかで、
正しく英国の初夏を思わせるような色調です

しかし、どの季節であってもパブ、というのは人の目には色鮮やかに見えるもの

そこを目指す人の足は自然と軽くなる、ということも
色にあらわしているのかもしれません

“ロンドン・パブめぐり”の冒頭ページには
著者が初めてパブに足を踏み入れた時からのパブへの思いが綴られています

それによるとロンドンのパブはおよそ8000件、
その中で約160件、わずか2%のパブめぐりをされていらっしゃる・・

その中からお薦めするパブはロンドンはテームズ河を中心に41件、
ハムステッドに4件、郊外のグリニッジに3件と合計48件のパブがご紹介されています

特にロンドンの中心地は
ショッピングの合間や博物館めぐりの合間などに
休憩がてら居心地の良いパブで一休みできたら旅の楽しさがぐっと増します

さて、どんなパブがご紹介されているのでしょう











No.1でご紹介されているロンドンのパブ
「シェークスピアズ・ヘッド」は
1735年創業の古いパブ

場所はリバティ裏手のカーナビー・ストリートに面しています

今までとなくこの界隈は通っていましたが、
やはり知らないパブへ足を踏み入れるのはちょっと勇気が要ります

しかし、様子が少しでも解ると
次ぎの旅で行ってみよう!と期待も新たになります

次回のリバティ帰りは
ちょっとパブで1杯!となることでしょう





No.10の「ラム・アンド・フラッグ」は
ヘリテージパブとしても名前が挙がる、
歴史古いパブの一つです

コヴェント・ガーデン近くの路地裏に位置する
この小さな間口のパブは
1623年までその歴史は遡れるそうです

ラムアンドフラッグ

その長い歴史の中では
様々な逸話が残され、その様子は店内の様子にも伺えそうです

ロンドン観光の中でも
コヴェント・ガーデンは足を運ぶ確率は非常に高いです!


No.28「オールド・チェシャー・チーズ」
このパブは著者がロンドンでパブに1軒しか行けない場合は
No.29「オールド・マイター・タヴァン」のいずれか、迷うところ・・・とのこと・・

どちらもその名前には
古い英語古語に使われる“Ye”が付く
名前を持つパブは少なくとも200年以上経っている場合が多いそうです

そうなると上記2軒のパブは
正真正銘のロンドンでも最も歴史あるパブになります

オールド・チェシャー・チーズ
“Ye Olde Cheshire Cheese”
オールド・マイター・タヴァン
“Ye Olde Mitre Tavern”

どちらもロンドンの中心地、
古くから人々が集う金融街や法曹街に程近い場所にあります

テンプル寺院やコートルードギャラ地ーの帰りに立ち寄るには
どちらも最適で、妙ところでしょう・・・


また、最も有名なリバーサイドのパブとしては
No.36の“グレープス”

テームズ河沿いにあり
チャールズ・ディケンズがここをモデルにした小説があるため
このパブの小さな部屋は“ディケンズ・ルーム”と呼ばれているそうです

うなぎの寝床のような奥へ進むと河沿いにテラスもあり、
夏はここでの滞在が気持ち良さそうです

また、フィッシュ・レストランとしても定評があり、とのこと・・・
つい、この界隈での見所を探し
次ぎの旅には是非その魚料理に出会ってみたくなります

グレープス



そして、観光客のみならず
ロンドンの中でも人気の高いハムステッドは
ご存知ハムステッドヒース、という大きな公園もあり、
又ハムステッド・ハイ・ストリートには
お洒落なショップが軒を並べ
そぞろ歩きにはもってこい!の地区でもあります
元々多くの詩人、画家、小説家などが住む地区でもありました

そんなことからも古い歴史あるパブから、
人気のガストロ・パブなど選ぶのも楽しい!

本書ではこの地区は4軒のパブを紹介しています

“ホーリー・ブッシュ”
“フリーメイソンズ・アームズ”
“フラスク”
“スパニアーズ・イン”


ホーリー・ブッシュ



同じ地区にありながら、
4軒まったく違うタイプのパブのようです

レンガの建物、1930年代の様式建築、
1700年代の城壁のイン様式とそれぞれに逸話がありそうな・・
是非ハムステッドを訪れる際には
このうちの1軒のパブでのんびりしたいな〜、と改めて思いました

スパニアーズ・イン
18世紀にスペイン人の兄弟が始めた
“The Spaniards Inn”



ロンドンの郊外になる
グリニッジ天文台がある街としても名高い
静かな街です

グリニッジにはテームズ河のクルーズで訪れる方法と
ロンドンの公共交通網としては新しいDLR(鉄道)で行くことができます

この街はテームズ河河畔に
19世紀建造された
この国が“海洋国”として名を馳せる、
海に囲まれた島国として世界中に航海をし、
様々な珍しいものを持ち帰っていた帆船としては世界でも有名な
クリッパー(快速帆船)船“カティ・サーク号”が係留されています

当時中国から紅茶を運ぶこの船は
現在この国にはなくてはならない“お茶”をいち早く運ぶ帆船として
短い期間ではあったが、
今に至るまで東洋からお茶を運ぶ快速船としては
その優美な船体も然ることながら
人気の高い帆船としても知られています

カティ・サーク号


子午線の天文台、帆船カティ・サーク号、グリニッジパーク、海洋博物館、と
街中至るところに見所満載のこの街では3軒のパブが紹介されています

「カティ・サーク・タヴァン」、「ヨット」、「トラファルガー・タヴァン」

さすがにどのパブも海洋に関係する店名です

やはり共通しているのは
その名の通り“海”に因んだ特色があります

今でご紹介したパブの中でも
特に「トラファルガー・タヴァン」はバーエリアとダイニングエリアとあり、
このダイニング・エリアではウェディングも可能な広さと風格があり、
かのう大英帝国誇る海軍のホレイショ・ネルソン提督の名に相応しい豪華さは
“パブ”と言う範囲の広さに驚くばかりです

トラファルガー・タヴァン バーエリア トラファルガー・タヴァン 全景 トラファルガー・タヴァン ダイニングエリア

1837年創業のこのパブはロンドンの中でも最も高級なパブの一つだそうです

ロンドン中の著名人が名物のニシン料理をお目当てに来るそうですが、
バー・エリアなら・・やはり、そこは“パブ=パブリックスペース”

ちょっと暑い日にでも立ち寄って、
その漂う高級感をちょっぴり味わうには良いかもしれません





そんな様々なパブを明るい水彩で描かれた本書は
眺めているだけでも目に嬉しいです


旅行者として事前にどんなパブか?と知りえていくことができる
大事な指針になる1冊です

今の季節は歴史あるパブだときっと暖炉があるかと思います

ぬくぬくとその暖かさに触れながらいただく1杯のビールはきっと特別な味わいだと、
期待にわくわくしてしまいます

どうぞ、ロンドンでパブにご興味のある方には取っておきの1冊です












1冊の本から旅が数段にも広がることがあります
それは個々それぞれに感じることも違うことだと思っています

それでもほんのちょっぴりご紹介している本が
何かのきっかけになれば
こんなに嬉しいことはありません

ご意見、ご感想をお待ちしております




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