今月のお薦め本






  〜2012年 4・5月〜


やっと私達の国も1年の内で1番緑の綺麗な季節になりました




花粉症の心配もなく、
むっとする湿気もまだなく、本州でもカラッとした空気がいただけるのが
この季節



外に出たくなるのが“心情”というものです

英国も同じように5月から徐々に陽が長くなり
日々散歩の時間が長くなっていることに気づかされます

特に今年ロンドンでは
エリザベス女王即位60周年の記念行事
(それにより毎年英国では祝日となる
5月最終週の休みが6月3日、とずれこむのは珍しいこと)、
ウィンブルドン・テニス大会、
7月27日からのロンドンオリンピック・・と
大きな催し物も続きます
これから休暇のご計画を立てられる方も多いことと思います

ほんのちょっぴりでもご紹介した1冊の本が
旅の指針になれば嬉しいです!

今月は犬のページを作ったばかりではありますが・・・
今回は“ねこ”です











【鉄道ねこ】

〜 英国の駅舎に暮らす猫を訪ねて 〜


鉄道ねこ


石井 理恵子著 撮影 トム宮川コールトン 奥田達俊
発行元 叶V紀元社  ¥1,600+税 2012年3月初版




英国、ねこ・・と、キーワードを打ったら
「石井理恵子」さんと出てくるのではないだろうか・・・と思うほどに
彼女の英国&ねこはもう何冊目になるのでしょう

今回ご紹介するのは
毎回ガイドブックでは知りえない英国を紹介してくれる
石井理恵子さんの最新作になります

自身で旅をしていても
本当に“ねこ”は中々出会えません・・

彼らは自由に生きる猫(普通に言うと“外ねこ”)と
家庭の家族に属している猫(“家ねこ”)の
どちらもいつでも顔を合わせてくれる訳ではありません


犬のように家族と外出、というのも
圧倒的にわずかな少数派





観光地で見かけることもなく、
街角で闊歩しているわけでもなく・・・・
時折住宅街の中で外から見える家の窓辺や
お庭から覘く可愛らしい姿が運良く出会えれば“御の字”




本当に運が良くて
時たま小道を横切る猫を見かけることも・・・・

でも、犬ほどの人懐っこさもなければ
呼びかけても止まってくれやしない・・




世界共通“普通の猫”は
家族以外には見向きもせず、
わずかお客さんを向かえる家庭の猫において
少しは“振り向いてくれる”程度・・



なかなか手ごわい相手でもあります・・





しかし、英国には遥か昔から「働く猫」として
家の中のネズミ駆除のためのみならずr
(犬が番犬として働くのと一緒)
同じくネズミ駆除のための「ウィスキーキャット」としての猫がいます!

英国はスコットランド誇る世界のスコッチウィスキーの蒸留所には
原料となるネズミの大好きな大麦があります

この大麦を狙ってネズミが横行する
蒸留所では困ります!ということで登場したのが
この猫




古来より“命の水”とも言われる
ウィスキーを守って可愛がられたのが
“ウィスキー・キャット”のお仕事です

C.W.ニコルさんの著作から
その名が日本でも知られるようになりました

今回ご紹介するのは
もう一つのお仕事?猫
鉄道駅に所属するねこ達の1冊です




タダでさえ出会うのが困難な猫達を追って
石井さんは英国へ旅立ちました

それは“会いに行く”が“会えるかもしれない”・・
そんな彼らを追って
英国中の鉄道駅へと向かいました

日本にも「たま駅長」が有名で
実は我が国にも各地において鉄道ねこが存在し、
はたまたうさぎから何故かイセエビまで駅長にしてしまうのは
いかがなものか?と思うものの
英国での鉄道ねこはあくまでも駅に“住む”ねこ
そして、大部分は“働く”彼ら

よってたかって衣装を着せて
列車に押し込めるのではなく
本来のねこの生活を人が邪魔することなく
共存しています

そんな彼らを収めたこの本は
旅のガイドでもあり、
鉄道好きにもお薦めの1冊でもあります

さて、今回は英国のどこを案内してくれるのでしょう









「はじめに」から始まる冒頭には
石井さんが今回この鉄道ねこを追った経緯が綴られています




英国は1800年代から英国鉄道駅には猫が居て
可愛がられていたそうな・・・

それも、ここには鉄道の倉庫にある食料のみならず
鉄道施設の電線をかじるネズミ退治に役立っていた

いわば鉄道で働く鉄道員の仲間であり、相棒だった・・というもの
やはり彼らの仕事で大きいのは
ネズミ退治

現在はそのネズミの被害がなくなったこともあり
在来線での彼らの仕事が無くなったために
猫のいる駅は殆どが田舎にある保存鉄道なのだとか・・・




鉄道発祥の国
英国では日常使われなくなった蒸気機関車などを
ボランティアの尽力により
大切に保存され次ぎの世代につなげようとする活動が
国中で活発に行われています

そのような駅舎に住み着いた猫たちは
今も駅や周辺の警備係を務め、
鉄道で働く人たちの癒しの存在にもなっています

そして、訪れる観光客の心も和ませてくれますが・・
しっかりと自分達の生活スタイルを決して崩さず
彼らの行動パターンを守り共存しています


この1冊はある意味では
保存鉄道ガイドブックとしても貴重な情報を得ることができます!


先ずは英国の鉄道ねこMAPから参りましょう!




本書から案内されている鉄道は10箇所

@ ノース・ヨークシャー・ムーアズ鉄道
 
Grosmont
A ステインモア鉄道
 
Kirkby Stephen
B イースト・ランカシャー鉄道
 
Manchester Piccadilly
C セヴァーン・ヴァレー鉄道
 
Kidderminster
D シッティングボーン・アンド・ケムズリー軽便鉄道
 
Sittingbourne
E ローンストン蒸気鉄道
 
Plymouth
F ノース・ベイ鉄道
 
Scarborough
G ブルーベル鉄道
 
East Grinstead
H グレート・セントラル鉄道
 
Loughborough
I リル・ミニチュア鉄道
 
Rhyl

石井さんの訪れた英国鉄道猫の旅は
主に保存鉄道の駅が多いようです


こうしてみると
改めて英国内ではこのような鉄道会社が多く存在することに驚きました

そして、どのページの猫たちを見ても
その駅で必ず仲良しのスタッフが居ること

最初に登場するノース・ヨークシャー・ムーアズ鉄道の停車駅では
数代に渡って暮らす猫達がいます

現在では2匹の猫

三毛猫のエリカと黒猫のディンク

すすだらけの整備士スタッフのポールさんと大の仲良しのエリカは
同じようにすすだらけ

この駅は多くの蒸気機関車が停車しているため
三毛の白毛がいつも煤色になっているエリカが居ます





それも蒸気機関車の石炭山があちこちにあり、
倉庫の中の機関車の間を自由に歩き回る彼女は
仲良しのポールさんと同じように煤まみれ

ポールさんやこの駅を歩き回る彼女の様子は
とても穏やかで可愛がられている様子が手に取るように解ります

その点元々の黒猫のディンクは綺麗に見えるかも!





本書の中で目につくのは
白&黒猫

スティンモア鉄道で暮らす
クウェーカーもそんな黒白猫

スティンモア鉄道会社のサイトの中に
“ステーションキャット”という項目があり、
猫好きなスタッフの存在が感じられた、という著者が訪れたきっかけにもなりました

ファニーフェイス(面白い顔)のこの黒白猫
ここにはクウェーカーが居ました




元々先代の17歳で亡くなった三毛猫のラビットと
オレンジと白の縞猫マーマレードという猫が居ましたが、
その後ふらっと現れたのが
ネズミを取らせたら非常に優秀なこのクウェーカー

ラビット、マーマレードの跡を継いで
このステーションで可愛がられています


また、英国の保存鉄道のイベントの一環として
よく行われるのが
子供達を対象にした様々な催し物です

中でも“機関車トーマスと仲間達”は
世界中の子供達から愛されています

そのイベントを行った時に
なんと列車に乗り込んでこの駅まで辿り着いた、
文字通りの“鉄道猫”がいます

ある日このイベントで使われた鉄道に乗ってきた
生後1〜2年くらいの若い猫

英国中央部からウェールズまで続く
風光明媚なセヴァーン河の名を持つ保存鉄道
セヴァーン・ヴァレー鉄道始発駅ブリッジノースに住む
白黒猫のパドルズです




1862年建造の可愛らしい駅舎の中を自由に歩き回り
スタッフみんなに可愛がられて
駅構内の駅員室にもギフトショップにも
彼女のご飯やミルク、寝床があります

特に駅員さんのブライアンさんはお気に入りで
毎朝出勤する車の音が聞こえる度に
駐車場までお出迎え

こんな可愛い歓迎を受けられる職場って羨ましい限りです


一際ぽっちゃり体系を持つ元貨物列車駅に暮らす猫
シッチィングボーン・アンド・クムズリー軽便鉄道の
縞猫のペブルスです



元々乗客を運ぶ鉄道ではなく
新聞用製紙工場へ資材を運ぶための貨物運搬用の駅舎でした

現在は鉄道好きや子供達が楽しむアトラクションとして復活した
小さな保存鉄道
現在は様々な年齢層のボランチィアによって成り立つこの駅舎には
カフェが併設されています

毎日カフェのおばさんにもらうご飯や
駅員の控え室でいただくご飯とこの敷地の中で自由に歩きながら
スタッフの方々に沢山のご飯をいただています

ご飯をいただいた彼は草地へもぐってしまったり、
機関車の陰にもぐってしまったり・・・・
1度目を離すとどこに行ってしまうか解らない、というところは・・
やっぱり外の猫だな〜





著者の訪れた
それぞれの鉄道にはそれぞれの猫の物語がありました

しかし、どの猫達も皆一様にぽっちゃり体系

それだけ周りの方々に可愛がられている様子が伺えて
天寿をできるのだろうな・・ということが想像でき
それだけも目にしていて安心してページをめくることができます




英国には以前私も偶然訪れた動物の保護施設が
非常に発達しています

著者も猫の保護施設「キャット・プロテクション」を訪問し、
その場所で新たな家族を待つ猫達と対面しています

英国では日本のようにペットショップはないので
猫と暮らすには
このような施設から譲り受けるか?
またはブリーダーさんのところから購入するか?になります

金銭のみの売買よりも
家族として受け入れるにあたり
キャット・プロテクションのような施設から迎い入れる場合は
きちんとした指導がなされます

お互いに良い環境を作るにあたっての相談や啓蒙もされるそうです

どうしても私達人間よりも寿命の短い彼らとの生活が
お互いに良い時間を持てるよう
私達も迎える側としても考えさせられます






本書の最後は“鉄道ねこ”の取材を終えて

著者の苦労や如何にして猫の取材が難しいか?という
メイキング裏話





取材には写真つきもので
調べた鉄道駅へ向かえば・・今日は居ない・・・

居てもどこかに隠れてしまっている・・・

日常家で一緒に暮らしていても
写真を撮ることが如何に難しい彼らですから、
野外で暮らす猫達を追いかけるご苦労は想像につきます

しかし、また追いかける鉄道も“保存鉄道”が多く・・
となるとその取材先へ向かう移動も大変です

日に数本しかない路線や
駅についても猫どころか人っ子一人居ない駅舎

しかし、どんな場所でも
偶然居合わせた方々の嬉しい手助けに
作られた本書であることに気づきます

そして、そんな心温まる1冊になったこの本は
旅本でもあり、猫の本

どちらもお好きな方にはお薦めの1冊です

どうぞ、1度お手に取って見てください











1冊の本から旅が数段にも広がることがあります
それは個々それぞれに感じることも違うことだと思っています

それでもほんのちょっぴりご紹介している本が
何かのきっかけになれば
こんなに嬉しいことはありません


ご意見、ご感想をお待ちしております




03年 9月 10月 11月 12月

04年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

05年 1月 2月 3月 4月 5月 6・7月 8月 9月 10月 11月 12月

06年 1・2・3月 4.5月 6月 7月 8・9・10月 11月 12月

07年 1・2月 3・4月 5・6月  7・8月 9・10・11月

08年 1月 2・3・4・5月 6月 7・8月 9・10月 12月

09年 1・2月 3.月 4.5月 6月 7.8月 9・10月 11・12月

10年 1・2・3月 4・5・6月 7月 8・9月 10月 11月

 
11年 10年12・11年1・2月   3.4月 5・6・7・8・9・10月  11・12月

12年 1・2・3月

 


Top New ページのTop